2017/12/13

入試英語が好きな受験生諸君へ

① 英語の勉強の合間に、ちょっと考えてみてほしい。
大学入試の英語は、往々にして「学際的な基礎教養」だと称されるし、学際的という捉え方には僕も賛成だが、しかしだね、教養がどうこういうのなら、ずっと根本的なところで英語が本当に王座に君臨しうるかどうか考えなおしてみようじゃないか。
たとえば、以下の英文を訳してみなさい。

[1]  "Ohm's law" states that the electric current through a conductor between two points is directly proportional to the electrical resistance across the two points.

[2]  In economics, the supply curve depicts the relationship between the price of a certain commodity and the amount of it that consumers are willing to purchase at any given price. 

これらの英文いずれもサラリと訳せる諸君なら、英語偏差値は70以上であること、間違いなかろう。
模試はもちろん本番試験でも満点いけるんじゃないかな、おめでとう!
そして、そんな諸君がだ、もしもこれら英文の意味内容を素直に受け入れるのであれば、きっと日本有数の楽しい大学に入学出来、留学すれば彼の地で最高の人気者となるだろう。
さらに、就職したらお客さまから毎日笑顔で接して頂けることだろうよ。

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② 冗談はさておき、以前からどうも気になっている英単語が幾つかある。
そのうちのひとつとして、"reasonable" という語について挙げてみたい。
この語の意味を、『売り手ではなく買手にとって「価値がある」』 と説いている英語科のセンセがいるらしい。
しかしだね、そもそも "reason" という語に、「価値」という概念があるだろうか?

元来、"reason" とは何か客観的に一貫性を認められる理屈のことではないかな。
一方、"価値(value)" というのは人間同士にて主観的に捻出される「利得」のことでしょう。
ここで、"価値"という語を強引に経済学とかぶらせていえば、資産運用の「効率」といえなくもない。
もしかしたら、reason という語にても何等かの「効率」のニュアンスを込めている人がいるのだろうか?
そこから、価値という意味も重なり合う、と言いたいのだろうか?

英単語の語義について、こんなレベルまで掘り下げて(あるいは飛躍して)考察してみるのは、楽しいかね?
楽しいとしたら、そんな諸君は大学入試英語なんぞとっとと終わらせて、もっと深くそして高くスタディを図るがよろし。

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③ ところで。
名の知れた大学の入試英語にて引用される英文の多くは、Wired誌や The Wall Street Journal誌、The Economist誌などの英米系巨大メディアのもの。
とくに Wired誌からの引用は、慶應SFCなどの理系「的」な学部はむろん、文学部でも引用されており、このように早慶の入試英語で出題が始まっているということは、こんご国公立入試でも採用されるのではないかな
 ─ という程度のことは過去問から予想もできそうなもの、だから学校や予備校の英語センセもちゃんと踏まえておきなさいよ(一応はプロなんでしょ)。

こういう大メディアとなると、欧米諸国で幅広い読者を対象としており、だから、科学技術や産業やビジネスなど汎用的な主題が多い、と、ここまでは高校履修のリーダ教科書でも分かるとおり。
もっとも、いわゆる難関大の入試英語に引用されるものとしては、それらの主題について「功罪の二律背反」を並行的に論じる文脈のものが飛びぬけて多い。
特に早稲田入試にこういう文脈進行の英文記事の抜粋が際立って多く、かと思えば防衛大や防衛医大でも目立つ。

なお、難関大の入試英語にても、大メディアからの引用テキストのみならず、何らかの学術エッセイの抜粋がなされる例も多い。
国公立の出題文で、とくに接続副詞が少なめのものなどがこれにあたり、これはこれで論旨が追いにくく、とりわけ慶應がこういう手口のテキスト出題を好んでいるようでもある、が、しかしそれでも、テキストの主題はやはり科学技術と産業とビジネスが多い。

いずれにしても、だ。
大学入試の英語で出題される英文テキストというものは、基礎教養などを遥かに超えた知的権威のあるイングリッシュスピーカーによって、単語の意味が精錬され、文意が与えられたものなのだ、オゥイェア!
いいかね、学生諸君、そんなインテリのイングリッシュスピーカーズによって既に与えられた文意をだ、日本の教師だの予備校講師だのが随意に解釈し直すことが出来るわけがないんだよ。
つまり、入試の英文解釈には「専門家」なんか居ないんだ、理数系科目におけるような独特の解法アプローチのセンセなんかいねぇんだ、だから、受験生諸君、いちいち恐縮しなくていい、それよりも英単語記憶に努めなさい。
英単語帳は市販で出回っているやつで十分、どうせどれも似たり寄ったりだ、その理由はここまでつらつら記したとおり。

以上

謝辞

ここに提示の記事は、いずれも私自身の判断責任のもと編集・投稿したものです。

大半の投稿は学生など若年層向けを意図してやや平易な表現にて、通俗性は極力回避しつつ、論旨の明示性を重視しつつ書き綴りました。あわせてまた、社会人の皆様にお読み頂くことも想定しつつ、汎用性高い観念知識を相応に動員しながら記した積もりです。

私なりの思考着想によるささやかな閃きが、皆様の諸活動にて何らかの光源たり得れば、望外の喜びであります。

山本