2014/03/28

春の奇談


同窓会の予定に、ちょっと遅れた。
慌てて会場のホテルに駆け込むと、すれ違いに、長刀を差した何人かの侍がスタスタスタッと駆け去って行った。

ん?なんだあれは、と一瞬いぶかしく思ったが ─ そのまま僕は早足で指定の大応接間に入っていく。
おお、いるいる、懐かしい顔がたくさんだ。
やあ、遅くなりました、みなさん、お久しぶりで!
僕は大声で挨拶したが、みなは無言でしーんと静まり返っている。

なんだ?なんだ?オレですよ、山本ですよ!
そう呼びかけてみるが、みなはどうにも悲しそうな顔で、僕が一人ひとりに挨拶に回っても、黙ってうなだれたり、そっぽを向いたり。
なんだ、どうなってんだ、と僕は少し混乱しまた腹も立つが、そんな僕の気持ちを案じてか、とくに仲の良かったひとりがすっと近づいてくると、僕に小声で囁く。
「おい…首が無いぞ」
「えっ?」
そこへ、いつの間にか、真っ白な顔をした写真屋が現れて、「さぁ…記念撮影ですよ、みなさん、庭の桜の木のところがよいでしょう」という。
まこと綺麗に咲き誇るその桜の木の下、僕は真ん中に陣取って、さぁさぁとみなも列になるように促して ─ はい、撮りますよ、パチリ。


その写真がさきほど送信されてきたのだが。 あっ!首が無い。
真ん中に立っている僕……以外の全員の首が無い!

これには僕も一瞬度肝を抜かれたが、やがてかなり腹が立ってきて、その写真屋にあてて、くだらない悪戯をするな、ちゃんとした写真を送れとの由、メール送信してやった。
するとまた写真が届いたが、今度は僕の生首……以外の全員の生首が数十体も写りこんだ桜の木であった。

おわり