自己紹介

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東京都立川市出身、慶應義塾大学卒業、某電機メーカ勤務にてソフトウェアシステムの海外プリセールス等を経て、現在は教育関連に従事

2015/05/29

有理化


「ねえ、先生、教えて欲しいことが有るんだけど ──」
「んーー?」
「なぜ人は人を好きになるの?」
「なんだって?また藪から棒に……さぁて、ね、そんなこと俺には分からないなぁ」
「ねぇーー、どうして?」 
「うーむ……ほら、たとえば、なぜ物質は反応しあうのか、っていう問いがあるだろう?でもこの問いに対しては、物質がそういう反応エネルギーをもともと持っているから、という答えしか用意されていないんだよ」 
「ふーーん。じゃあ人間の感情というものは、人体と物質の反応で起こるってこと?」
「まあな。あんまり面白くはないだろうが、そういうもんだよ。


「なーーんか、おかしいなぁ」
「何が?」
「人体と物質が、感情をつくるなら、どんな人間も同じ感情しか有しないことになるでしょう」
「それは、まあ…そういうことになるかな」
それじゃあ、どうして同じ人間がどんどん複雑な論理を作り上げてきたの?数学とか、法律とか」
「それはだね、同じ人間とはいってもみんなが同じ体質というわけではないから、感情だって実際は千差万別、それでいろんな論理が出来ちゃったんじゃないかな」
「へーー。じゃあ逆に、いろんな論理にもかかわらず、どうして人間は滅亡しないで続いてきたの?」
「難しいこと訊くんだな君は。えーーと、人間の論理がどんどん細かく分かれていって、それらがぶつかって割り切れずに無限小数みたいになると、審判員のような人が…いや、たぶん神様が現れて、どこかで論理がまとまるように調整しているんだよ。はっははは」 


「あっ!分かった!」
「何だ?何が分かったって?」
「シェークスピアのお話。ジュリエットが、『なぜあなたはロミオなの?』 って尋ねる理由が分かったの」
「ほう?」
「ジュリエットはいろんな論理で混乱させられていたから、神様に確かめているのね!私は本当にロミオが好きなのですねって」
「はっははは、面白いこと言うんだな。で、神様は何とおっしゃるかな?」
「おー、ジュリエットよ、汝の信じる通り、汝はロミオを愛しているのだぞ、っておっしゃると思う」
「なるほどね ─ それじゃあ、君の持ってきた問題はもう解決したようなもんだな」
なぜ、人は人を好きになるかってこと?」
「うむ。いいかね?誰かを好きになるという君の感情に、どんな論理をくっつけても、さらに神様が介在して、上手くまとめてしまうんだよ、分かったか?」
「うーん…分かったみたいな、分からないみたいな……あれっ?先生?どこ行ったの?…ねえ、せんせー、なんで急に消えちゃうんですかー?せんせーーっ、どこへ行っちゃったんですかー?ねえ!もっとお話したいことが有ったのにっ!」

おわり

2015/05/22

新世代


「先生!お願いがあります!」
「んーー?」
「あたしたちに、競泳をコーチしてください!」
「えっ?競泳だって?はははは、そりゃ無理だよ、俺は泳ぐのは苦手だから」
「嘘っ。先生は 『真夏の女神』 と一緒に世界中を航海されていますよね。ですから泳ぐのは得意なはずです!」
「…なんで君たちはそういうことを知っているの?」
「先生、お願いです、もう先生に頼るしかないんです!あたしたちに競泳をコーチしてください!」
「う~む。だけどさぁ、君たちは県大会でかなりいい成績を保持しているじゃないか。なにも俺にコーチを仰がなくたって…」
「いえ、あたしたち、全国レベルで上位にくいこむためには、『今のままではダメ』なんです!」
「そうか……。よーし、分かった!おい、キャプテン!これから部員全員プールサイドに集合させるんだ。もちろん女子部員だけだぞ!」
「ハイ!分かってます!」


「さぁ、みんな集まったか?他校のスパイはいないだろうな?男子は混じっていないだろうな?」
「大丈夫です、先生」
「うむ。それでは、俺からごく簡単に伝えておきたいことがある」
「ハイ!お願いします!」
「競泳選手というもの、ある日、ある時間の、あるレースにおいて、自分でも信じ難いほどの素晴らしい記録を出すことがあるようだ」
「ハイ!」
「そのような傑出した記録というものは、自身のコンディションはむろんのこと、プールの水との相性にも大きく左右され、さらには湿度や気圧にも影響されるらしい」
「ハイ!」
「しかしながら、だ。これらフィジカルな諸条件については、医学的にも物理的にも十分な説明はなされていないという……どうだ、キャプテン?」
「さぁ、よく分かりません…。実は、あたしは最近ちょっと伸び悩んでいて…」
「君の意見はどうだ、副キャプテン?」
「あたしにも、分かりませんけど…。実は、あたしはちょっとオーバーワーク気味で疲れがたまっているんです」
それじゃあ……よし、個人メドレーで準決勝まで行った君、どうだ君の見解は?」
「あのぅ…実はあたしは、大会のあとで肩を痛めてしまって……だから、もう二度と自己ベスト記録の更新は出来ないような気がしているんです」
「はははは。そういうことか ─ おい、みんな聞いてくれ!実はこんな格言がある。『往年の大選手には気をつけろ』、とな。この意味が分かるか?」 
「……」
「要するに、かつて並外れた実力を有していた選手は、いったんは衰えたと見えても、ある時に突然おそろしいほどの実力を発揮することがある、という警句だ」
「……」
「いったい、なぜだろうか?それこそがつまり、俺の伝えたいことであり ── おいっ!?キャプテン、何をしているっ?」
「全員、練習開始ッ!」
「さぁ、気合入れていくぞッ!!」
「オーーーッ!!」 
「なんだ?なんだ?みんな、次々とプールに飛び込んで…おいおい、まだ俺の話は終わってない!……いいか、俺の本当に伝えたいところはだな、人間はどういう原因からどういう結果をもたらすか、まだまだ明らかにはされていないと、だからけして諦めずに、常にチャレンジし続けろと、それでこそ誰もが自己記録の更新をも……こらっ!聞いてるのか君らは!?」

おわり

2015/05/19

デコーダー


「ねぇ!先生!お願いがあります!」
「んーーー?」
「あたしに瞬間移動の方法を教えて下さい!」
「え?瞬間移動だって?それなら△△先生に訊いてみたらいいだろう?」
「やだー。だってあの人、インチキばっかりのヘンタイなんだモン」
「うむ、それはそうかもしれないが、だからって、なぜ俺が」
「もう先生しか頼る人が居ないんです!先生は月世界のかぐや姫としょっちゅう会ってますよね。ねえ、せんせー、あたしにも瞬間移動の方法を教えて、お願い」
「うーむ、瞬間移動か……いやぁ、ちょっと厄介だぞ」
「なにが厄介なの?」

「あのねぇ。瞬間移動するためにはね、要するに、物理的な実体である君を論理的な記号に分解しなければならないんだよ」
あっ!もしかして~、映像とか音声をデジタル変換して転送するっていうやつ?
「まぁ、それに似ている。君の肉体は全てが記号化され、信号化されて、光の粒子になって移動していくんだ」
「ふーーーん……でもさー、それって、またもとの実体に戻すと、何かが消えていたりするんじゃない?」
「そうだ、そのとおり!君は賢いなあ、そこまで考えが働くのなら、瞬間移動のおそろしさも分かるだろう ─ さあ、もう帰れ。それから宿題忘れるなよ」

「ちょっと待って先生!記号が実体に戻った時に、『何か余計なものが付け加わって』 しまう場合もあるの?」
「むぅ?…まあそういうことも、あるかも知れないなあ…さあもういいだろう、帰って宿題やっとけ」
「うん、わかった」
「むぅ?…まあそういうことも、あるかも知れないなあ…さあもういいだろう、帰って宿題やっとけ」
「だから、もう分かったって」
そうだ、そのとおり!君は賢いなあ、そこまで考えが働くのなら、瞬間移動のおそろしさも分かるだろう ─ さあ、もう帰れ。それから宿題忘れるなよ」
「もう、それは分かったから、先生」
君の肉体は全てが記号化され、信号化され、光の粒子になって
「先生、なに言ってるの?」
「うーむ、瞬間移動か……いやぁ、ちょっと厄介だぞ
「先生、なんかおかしいよ?!」
うむ、それはそうかもしれないが、だからって、なぜ俺が」
「あのぅ、あたしもう帰ります、じゃあさようならっ!」
「え?瞬間移動だって?それなら△△先生に訊いてみたらいいだろう?


ずっと続く

2015/05/14

エントロピー



「先生!お願いがあります!」
「んーー?」
「あのっ、来週の陸上競技大会で、あたしが絶対に優勝出来るように、魔法をかけて下さい」
「なんだと?…どうして俺にそんなことを頼むのか?俺は魔法なんか知らないぞ…」
「嘘っ。先生は以前に、『森の魔女』 から魔法を伝授されていますよね。あたし、ちゃんと知っているんです。だからお願いします、先生の魔法で、あたしが大会新記録を出して優勝出来るようにして下さい!」
うーむ…そんなこと言われてもなぁ…どうしたもんかな…?おい、君はいったいどうして魔法に頼りたいんだ?大会で優勝したいのなら努力すればいいじゃないか」
「努力だけでは、間に合わないんです!どうしても今度の大会で新記録を出して優勝しないければならないんです!だから、魔法を」 
「間に合わないって、何が?何に?ん?」
「……じゃあ、先生にだけ本当のことを言います。実は……」


「う~む。要するに君は、今度の陸上大会において、ご家族の皆様がご覧になっている前で新記録を出して優勝したい、ということだね」
「そうです!今回だけでいいんです!先生、お願い。あたしに魔法の翼を下さい!飛ぶように疾走したいんです!」
「君の気持ちはよくわかった……うむ、魔法をかけてやってもいい。ただし、だよ、あらかじめ一つだけ大切なことを言っておかなければならない」
「えっ?…なにか、よくないことが起こるんですか?」
「いいから、とりあえず聞け。あのね、確かに君は魔法の力によって、とてつもない記録を叩き出して優勝出来るだろう」
「ハイ、それだけでいいんです」
「だが、この魔法は、君が周りの世界よりほんの僅かだけ速く駆け抜けるように作用するんだよ。その一方で、競争相手はもちろんのこと、ご家族の皆さんも、そして僕も、つまり世の中のみんなが、君より少しだけ遅れた状態に留まることになるんだよ ─ さぁ、どうするかね?」
「……ああ、そういうことだったんですね。でも……それでいいんです、あたしはもう覚悟を決めました。だから、魔法をお願いします」
「だが、一度かけた魔法は、もう復元は出来ないんだぞ」
「構いません。さぁ、あたしの背中に翼を」 
「うむ」 


「あっ!先生、こんにちは」
「よぉ、君か。昨日の陸上大会は ─ 」
「凄かったなぁ、って言いたいんでしょ。でもなんというか、実感としては、もうすっかり遠い昔のことみたいで」
「ははは、そういうものかな。まあ、ともあれ ─ 」
「ご家族の方々も大喜びだっただろう、って訊きたいんでしょう?もちろん、うちのみんなは喜んでいますよ。まぁ正直なところ、辛く悲しい気持ちも有ったんですけど、でもなにもかもが間に合って、ホント、これでよかったんです」
「うむ……まあ、それはともかくとして、なぁ、君は ─ 」 
「後悔は無いのか?って訊きたいんでしょう。そうですねぇ、あたし、賢くなったというか、悟りきった感じなんですよ。こういうのが成長ということなのかなって、実感しているんですよ!」
「ああ、そうか、成長か。なるほどね…ただ、俺が言いたいのはね ─ 」 
「もう魔法には頼ってはいけないよ、っていうことでしょう?ふふふっ、先生の言いたいこと、全部分かっちゃう。もちろん、もう魔法には頼りませんよ、だって、ちょっと失礼かもしれないけど、なんだかもう先生のお話にも魔法にも飽きちゃったから」


おわり

2015/05/11

ステイルメイト


「先生!お願いがあります!」
「んーー?」
「あたしのチェスの相手をして下さい!」
「誰が……えっ?俺がやれっていうのか?うーん、いやだよ俺は。チェスや将棋は面倒くさい。それに、なんだか妙にいやな予感がするんだよ」
「そんなこと言わずに、お願いしますよー、先生。だって、他にはもう相手がいないんだもん」
「ほほぅ?まあ、そうだろうな。それじゃあ俺がちょっとだけ相手してやるとするか」
「ふふっ、本当にちょっとだけ相手してくれればいいんです。長くはかかりませんから(笑)」
「なんだ?……まさか君は、俺を数分で打倒するつもりじゃないだろうな?」
「さぁ、そうなるかもしれませんね。ふふふっ。それじゃあ早速始めましょう、先生」
「うむ」 


「じゃあ、先生が先手で、どうぞ」
「よし……ところで君にひとつだけ念押ししておきたいことがあるんだけどね。君は、いわゆる『悪魔の布陣』を知っているか?」
「え?魔法陣ですか?」
「ちょっと違う、いや、かなり違う。チェスの『悪魔の布陣』だよ」
「聞いたこと無いですね」
「そうか……じゃあ、ちょっとだけその話をしておこう。いいかね?君はチェスの対戦において、駒の動かし方が何通りありうると思う?」
「さぁ」
「驚くなよ、最初の4手だけでも、なんと3千億通り以上もある」
「え、そんなに…?」
「そうだ、そういう駒の動かし方が、局面が進むにつれてもっと増える、もう途方もない数だ」
「へぇ……」
「先手と後手が、どのような順番で、どの駒を動かすと、どんな譜面になりうるか。これらひとつひとつの厳密な場合分けだって、恐るべき計算を正確に行えば可能だ」
「ねえ先生、何を言いたいんですか?もしかして、あたしを混乱させようっていう策?ふふふ、無駄ですよーだ。そんな手には乗りません」
「違うよ。俺が言いたいのはだな、つまり、今言った駒の動かし方のすべてが試されたことはおそらく無いということだ」 
「だから、なに?ねえ先生、早く始めてよ。チェスは口先でするものじゃないわよ」
「口先だけで済むことを祈りたいもんだ。いいかね、これから二人で、ある特定の順番によって、お互いの特定の駒を特定の譜面に進めていくと、驚くべきことがおこる ─ かもしれない。これがチェスの『悪魔の布陣』という言い伝えなのだ」
「もう、分かったから。早く、早く!」

  
「あっ!しまった! ─ もしかしたらと胸騒ぎを覚えていたが、これは本当に大変な展開に…!
「ねぇー、どうしたの、先生?もう降参?ふっふふふ、なーんだ、やっぱり弱かったわね」
「いかん!これ以上は、いかん!俺たちはすぐにこのゲームを終わらせるべきだ!」
「なーに言ってんの。ふふふふっ、次でチェックメイトよ」
「あっ!おいっ!空を見ろ!今何かが飛んで来たぞ」
「さぁ、なーんにも見えなかったけど」
「いや、何か金属的に光ったものが飛んで来たんだ!」
「もう、いい加減にしてよ。先生の負け、そうでしょう?早く認めてよ、ねぇー」
「ばかっ。今のが核ミサイルだったら、どうするつもりだ!もうダメだ、このゲームは無しだっ!」
「あっ!ひどーい先生。駒をひっくり返すのは、騎士道にもとる行為よ。もう先生とは二度とチェスを打たないから」
「その方がいい。なぁ、君は今のゲームのことは全部忘れるんだ …… ああそれから、宿題は忘れるなよ、明日までだぞ」
「分かってますよー。国際関係論のところでしょ、やりますよーだ」


おわり

2015/05/07

若葉


「ねぇ!先生!」
「んーー?」
「あたしたちの、バドミントンのコーチをして下さい!」
「なんだ?なんだなんだ?バドミントンだと?ハハハハハ、俺にバドミントンは出来ないよ」
「いーえ、出来ます。あたしたち、ちゃんと知ってるんです!先生がたいていのスポーツをこなせるってことを!だから、バドミントンの強化コーチをお願いしたいんです!」
「うーん、困ったなぁ…あのね、バドミントンを教えてやれないこともないのだが、でも、あんまり気乗りがしないなぁ」
「そこのところ、なんとかお願いします!いまや頼りになる人は先生しかいないんです!」
「……そうか。うむ…そんなに言うなら、ほんのちょっとだけ引き受けてやってもいいぞ。ではキャプテン、部員全員をコートに集合させるんだ」
「ハイ!ただちに!」 


「さぁ、バドミントン部員は全員集合したか?」
「ハイっ!」
「……部外者はいないだろうな。他校のスパイは混じっていないだろうな?」
「大丈夫です!」
「よし。それでは今から、奇跡のようなスマッシュを君たちにだけ披露してやる」
「ハイ!お願いします!」
「じゃあ、県大会ベスト8の子、そう君だ。まず君から俺に向かって思いきり打ち込んでこい。際どいコースを狙ってだ。そこで俺がスマッシュを叩き返してやる」
「はっ!分かりましたっ!」
「さぁ、来い」
「とりゃぁああっ!」
「ふんっ!」
「あっ?」
「今、シャトルが…」
「先生!シャトルが一瞬だけ消えました!」
「一瞬、シャトルが見えなくなりました!」
「これでは、返せません!」 
「打ち返せるわけがありません!」
「いったいどうなっているんですかっ!?」
「はっはははは、驚いたかね?そうだろうな。ほんの一瞬、みんなの目の前からシャトルが消えてしまった」
「……先生、いったいどういう仕掛けなんですか…?」
「うむ。今見せたスマッシュこそは、人間が網の目のように張り巡らせてきた論理の隙間に存る、まったく別の、裏の論理なのだ ─ 俺はこれを偶然にも発見してしまった。だから使いこなすことが出来るんだよ」
「……」
「……」
「おいおい、なんだなんだ、君たちはすっかり静かになっちゃったなぁ」
「……」 
「……」
「さぁ、どうするかね?今のスマッシュを、会得したいかね?これを駆使すれば対戦相手を仰天させることはもちろん、確実に勝ち進むことだって出来るんだぞ」


「……あのぅ、先生」
「んーー?」 
「…あたしたちは……あたしたちはそんな特殊な裏技を独占してまで勝ちたくはないんです!」
「ふんふん?」
「…あたしたちには、論理も実体もすべて同じものなんです。そこを切り分けることなく、あたしたちは全力で戦いたいんです」
「ほほぅ。なるほど」
「…ですから、みんなが共有出来る直観と感覚において、正々堂々と戦うだけです!」
よし!それでいい!さすがは女の子たちだ ─ あっはははは、だから言っただろう、俺はあんまり気乗りしなかったって。」
「……すみません」
「さぁ、君たちは君たちの直観と感覚で、精一杯戦ってこい!」
「はいっ!」
「ああ、それから一つだけ言っておいてやるが、もしかしたら君たちこそが、これまでの論理を超えた新規の論理を発見するかもしれないぞ」
「もしそうなったら、あたしたちはどうすればいいのですか?」
「さぁな、俺には分からんなぁ。たぶん誰にも分からないだろうなぁ」



おわり

2015/05/06

ヴァラエティ

暫く以前に、「元素の価格」 というコラムをここに投稿した。
その続編として、あらためて簡単なエッセイを記しておく。

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時々、我々人間はハードウェアである以上、どこかに限界があるのではないか、と考えてしまうことがある。  
そもそも、我々人間をハードウェアとして構成する物質・元素は限られている。
(たとえ代謝は絶え間無いとはいっても、その物質と元素は限られている。)
また、我々が農林水産業や医療やエネルギーや鉱工業において取り扱うハードウェア、つまり物質・元素も、やはり限られている。
だから、この生産物と人間の相対関係においては、何らかのタイミングで必ず供給超過となる ─ つまり、人間の方が余ることになる。
本当はもう、とっくに余っているのかもしれない。

それで、しょうがないからカネや法や議会や知識産業などという虚構=ソフトウェアを生み出して、それらを余剰な人間にあてががい、民主主義だの貿易交渉だの国際金融だなどと遊んできたのでは?
そして一方では、ハードウェア型の職能における生産活動はすべて、ロボットによる複製拡大にとって代わりつつあるのではないか。

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いや、たぶん違う。
我々はありとあらゆる素材や元素の新規組み合わせを生み出して、新たな物質を作り出してきた。
新たな物質素材は次から次へと編み出されており、その量的規模はともかくも、組み合わせの上限にはまだまだ到底至っていない。
と、すると、たとえ人間自身を構成するハードウェアは有限であっても、農林水産業や医療やエネルギーや鉱工業を織り成すハードウェアは次から次へと新種がまだまだ出てくるわけだ。
よって、これらの産業において人間がいつまでも余るわけがない。

それ以上に、もっと重要なこと。
我々人間自身は、ハードウェアとしては確かに限られた物質素材でしかないが、しかしさまざまな創出を仮想的にひらめく「脳」においては、まだまだ論理的な試行錯誤が終わっていないはずだ。
だからこそ、我々は次から次へと新種のハードウェアの組み合わせを創出出来るというわけだ。
ロボットには、まだここまでは出来ぬだろう。

つまり。
我々人間の失業率とは、新たな元素物質の組み合わせによる新素材の創出速度と、ロボットによる既存のハードウェア複製拡大の速度、この両者の速度差なのである
─ なんて言い切ってみれば、一丁前の論文のたたき台にはなるかもしれないぞ。



以上

謝辞

ここに提示の記事は、いずれも私自身の判断責任のもと編集・投稿したものです。

大半の投稿は学生など若年層向けを意図してやや平易な表現にて、通俗性は極力回避しつつ、論旨の明示性を重視しつつ書き綴りました。あわせてまた、社会人の皆様にお読み頂くことも想定しつつ、汎用性高い観念知識を相応に動員しながら記した積もりです。

私なりの思考着想によるささやかな閃きが、皆様の諸活動にて何らかの光源たり得れば、望外の喜びであります。

山本