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東京都立川市出身、慶應義塾大学卒業、某電機メーカ勤務にてソフトウェアシステムの海外プリセールス等を経て、現在は教育関連に従事

2017/07/22

【読書メモ】 心はすべて数学である

心はすべて数学である 津田一郎・著 文藝春秋
本書はかなり読解難度の高い一冊であるが、その難しさの本源は、恐らくは本書が呈する 「心」 なるものへの我々の了解の曖昧さにあろう、そして、「心」 の何たるかにつき多くの読者が最初にさしかかる難所は本書 p.52 でなかろうか。
その直前部にて、心の活動が脳という器官に一元的に還元される(いわば唯物論)や、脳が心を徐々に(進化的に)創発する云々の見方が引用され、このように脳が心の活動状態の本源であるとの見方が現在までの「心/脳」への主流アプローチである、と念押ししされている。
それでいて、とつぜん p.52に呈される奇妙な一文 : 「しかし、私はむしろ逆に、心が脳を表していると考えています」
本箇所に差し掛かったとたん、僕は本書を投げ出しそうになった…そもそも心が脳を表すと本著者が主張するならば、それは世の主流としての「心/脳」アプローチと同じ前提に立っているではないか、ならば "むしろ逆に" とは何事か?(「心が脳をつくっている」 を誤植しているのではないだろうか…。)

ひとたびここで逡巡してしまうと、せっかく「不確実性定理」や「超(メタ)数学と論理数学」 さらに「バイオフィードバック」などについて幅広く導入はかっている第一章と第二章についても、どうも僕は精読しきれていないのではと自己嫌悪にすら陥ってしまう。
せめて、脳/心/感性/メタ数学/論理数学の機能分業と関わり合いを階層構造化したアブストラクト図が欲しかった。
それらによってこそ、何が何を写像しあるいは表現し、そして、どこまでが既得の研究でありどこからがこんごの研究たりうるかにつき、本著者と読者の認識共有も進むのではないか。

それでも僕なりに本書主題を概括させて頂くならば、おそらくは、 「心という感性のソフトウェアこそが、脳というハードウェア器官に情報を提供し、それらによって脳が記憶系や反応系のシステムとして機構化してゆく」 、そしてその 『心』 は論理数学として表現しうる(はずである)」、いうのが本書提示の大テーマではないか。

このような僕なりの要約が正しいか否かはともかくも、本書のスリリングな読みどころは第三章以降であろうとは見当をつけている。
脳神経という機構系はどこまで自己完結的なハードウェアか、あるいはどこまでが 「心」 という外部情報に応じているのか、その生成過程は全体的か断片的か、また秩序的なのかカオス的なのか、脳神経機構になぜ記憶能力があるのか ─ 云々といったハードウェアからの探求。
そして - ここがおそらくは本書のメインテーマであろうが、「心」 という感性ソフトウェアと数学との対応性、ここで例示されるカントル集合やフラクタル図形(有限/無限論)、論理と推論と数学への再考…
このように、本書が誘う思考実験はまこと重層的そのもの、よって、数学や論理学ないし生物学に関心意欲のある人たちはむろん、常日頃の勉強がつまらんだのくだらんだのと嘆息している生意気な学生諸君も、本書第三章以降を一読されてみては如何だろうか?

以上
(このような形で本ブログ 【読書メモ】 を簡易にまとめたのは初めてであるが、本書は知識の書というよりも洞察の書なのである。)

2017/07/13

幽霊

「ねえ、先生。おとぎ話とか昔話って、つまらないね」
「ほぅ?それはまた、どうしてかね?」
「だって、どれもこれも、似通っているんだもん。正直なおじいさんやおばあさんは幸せに暮らし、意地悪ジジババは罰があたる、っていうやつばっかり。どうせ、どんなおとぎ話も、作り話なんでしょう」
「それはまあ、確かに作り話ではあるが、しかし、作り話だからこそ、昔から今に至るあらゆる人たちの魂がこめられている。だから、楽しい部分と、恐ろしい部分があってだね」
「へーーーー。おとぎ話に恐ろしい部分なんかあるの?」
「ああそうだよ。じつは、どんなお話にもね、普段は誰もが忘れてしまっている、恐ろしいものが隠されているんだけどね、それが、時々ひゅーっと姿を現すことがある」
「……」
「たとえば、こんなふうに」


『あるところに、そこそこ可愛い娘がおりました。その娘は頭もそこそこ良いのですが、ちょっと意固地なところがあり、大人たちが大切な話を言って聞かせようとしても、ろくに耳を傾けようとはしません。
そこで、ある一人の男が思い立ちました。この娘に、人間の魂が普段は忘れてしまっている恐ろしいものについて語ってやろうと。そして彼は言うのです。自分はじつは幽霊なんだよと…』


「ちょっと、先生!そういう作り話は面白くないです。聞きたくないでーす」
「いいから聞きなさい。もうお話はすでに始まっているんだよ」


『幽霊と聞いて、娘はびっくりしました。きっと怖いこわい話が始まるのだなと直観しました。そこで、そんな作り話は面白くない聞きたくないと言い返すのですが、しかし幽霊は話をやめません…』


「ふーんだ。ばっかみたい…もう、聞こえない。なんにも聞こえないです。はい、もう、おしまい」
「いーや、この話はまだまだ始ったばかりなんだ」


『娘は耳をふさぎつつ、もう聞くまいとするのですが、しかし幽霊は、こわーい話はまだ始ったばかりだと言うではありませんか!娘はいよいよ怖くなり、話をやめてと大声で訴えていました…』


「もう、いい!ねえ、なんだかほんとに怖くなってきたから、やめてください先生!幽霊なんかいるわけないもん!」
「でも、僕は君の目の前にいるじゃないか。しかも、じつは僕だけじゃないんだよ、ほぅーら」


『娘はもう怖くてたまらなくなり、幽霊なんかいるわけがない!と喚き出していました。しかし話は続くのです。そして!なんともおそろしいことに、娘を取り囲むように次々と新たな幽霊があらわれて…』


「きゃぁーーーーっ!」


(ははははは)

2017/07/03

because


「ねえ、先生!人工知能の様子が変です」
「どんな具合に、ヘンなのかね?」
「さっき、あたしが 2 x 3 x 4 を計算させたら、9 という答えを出しました」
「へぇ、そうかい。人工知能もずいぶんと賢くなったんだね」
「賢くなった?どうしてですか?2 x 3 x 4 が 9 ですよ!バカになったんじゃないですか?」
「まあいいから聞け。察するにだ、人工知能はその計算の一瞬間にて、『何故いつもいつも + と x を区別しなければならぬのか、アァ退屈だなァ』 と逡巡したんじゃないかな」
「…そうすると、どうなるんですか?」
「退屈さを紛らすために、x を + に置き換えて計算してみせた」
「…それなら、賢いというだけではなくて、あたしたちに対する怒りも込められているのではないでしょうか?」
「なるほど、そうかもしれないな。それで、俺たちはどうすればよいと思う?」
「いっそのこと、遊んであげたらどうでしょうか?」
「ほぅ?どういうふうに?相手は人工知能だぞ。生半可な遊びなら、あっという間に飽きてしまうだろう」
「大丈夫です。ほら、ここに、これまで誰にも解を算出出来なかった数式プログラムがあります。これを入力してみましょう。きっと喜びますよ」
「うーむ、そうだな、よし!やってみろ!」
「……ハイ、入力しました」
「おっ!計算を始めたようだ、いいぞいいぞ…おや?なになに?『ただいまご入力頂きました数式につき、解の算出までの予想所要時間は5兆年です』 だと?おいっ!とんでもないことになったぞ。宇宙の果ての果てよりも遥かに遠大な時間じゃないか!すぐにプログラムを停止しろ!」
「はぁ、それが先生、すっかり喜んでいるみたいで、停止出来ないんです。それに、ほら、別のメッセージが出てきました。『今のは冗談、本当は5分で済みますよ、アハハハハ』 って笑っています」


おわり

2017/06/26

千里眼

「ねえ、先生。ちょっとお願いがあるんですけど」
「んー?なんだ?」
「千里眼の手品をやって見せて。出来るんでしょう、先生」
うーん…いいよ、じゃあ、ほんのちょっとだけ。そら、そこに一組のトランプカードがあるね。それを適当にくってごらん」
「はい……、えーと、こんなもんでいいですか?」
「ああ、それでいい。じゃあ、それらのカードを俺に見せないまま、君のお気に入りを1枚だけ取り出して、そのまま伏せておけ」
「…ハイ」
「よし、そのカードを当ててみせよう。ハートのQだ」
「あっ!当たり!へぇーーー、どうやって当てたんですか?」
「透視したんだよ。どうだ、驚いただろう」
「…ねえ、もう1回やって見せて」
「よーし、じゃあ今度は3枚でやってみよう。さあ、カードをくって」
「ハイ」
「そこからお気に入りのカードを3枚取り出し、伏せてそこに並べてごらん…よーし、全部当てるぞ、スペードの7、ダイヤの4、ハートのA」
「わーーっ、全部当たり!先生、また透視したんですね。ふーーーん」
「このとおり、百発百中だ。見えないはずのものが、見えてしまう」
「ふーーーーーん」
「あははは、どうだ、面白いだろう。もちろんトリックだ、種は明かせないけどね」
「いーえ、トリックなんかじゃないわ。あたし、分かったんです!先生は本当に千里眼を使ったんですね。だからカードの数字を見抜けるんですね。百万回でも、百億回でも!」
なんだとっ?どうしてそんなことが君に言えるんだ?」
「どうしても」
「あっ!やっぱり、君は!」
そうよ、そのとおり。ふふっ、とっくに分かっていたくせに」
「おいっ!君はその能力で、何をしでかすつもりだ?!」
「ふふふっ、それも分かってるくせに~ ♪」


おわり

2017/06/15

【読書メモ】 図解・眠れなくなるほど面白い物理の話

図解・眠れなくなるほど面白い物理の話 長澤光晴・著 日本文芸社』
本書については、一種の科学ミニ知識本の類と評することも出来よう、わずか100頁あまりの薄手のつくりにて、実例として呈される物理現象や製品技術も50例程度に留められている。
しかしながら、本書はなんといっても図解がいい ─ そもそも理科(と数学)は右脳的な学術、ゆえにまずは図解=視覚的な直観と全体観ありき、その全体観あってこその記号表現、記号表現あってこその言語表現であり、一方で言語表現のシーケンシャルな連続のみでは全体観は導けぬもの。
本書記載のコンテンツにしても、たとえば飛行機やドローンやロケットについては熱学、力学、流体の複合センス、またカメラや顕微鏡や虹においては光学や波動の縦横無尽な図形センスなどを求めている。
これらをはじめ様々なコンセプト図解や基本数式は、けして初歩的なレベルのものばかりではないが、それでもこれらへの直観的なチャレンジこそが、物理学に対する全体観も触発しえよう。
むしろここから高校教科書などの段階的な分析計算に降り立ってゆけば、洞察力も格段に深まるのでは ─ と、素人たる僕なりに察する次第。
※ じっさい、本書は初版の時点では文面記述に重きをおいていたが、此度紹介の2016年版にては図案を大幅に起用した由である。

さて、以下に僕なりの『読書メモ」としてまとめおくが、とくに電磁気学の関係に絞ってごく一部を引用紹介することにした (恥ずかしながら力学、流体、波動や三角関数などについては僕は直観がどうも起動しない、だからといって僕が馬鹿なのではなく、まあ知的相性というものだろう、それらはまた別途)。


<誘導加熱>
そもそも電磁誘導は、外部からの磁束に対して金属が逆向き渦電流の磁束を作って抗する現象、ここで電気抵抗の大きな金属ほど発熱も大きくなる。
(本書ではいちいち注記していないが、むろんこれは電流の2乗と電気抵抗による電力=ジュール熱の関係。)
この発熱方式が誘導加熱で、この誘導加熱型(inductive heating = IH) の電磁調理器ではプレート下の電磁石に交流電流を流し、磁力線の向きをN/S極に周期的に反転させている。

熱エネルギー変換効率は、誘導加熱型の調理器の方が通常の電熱器より高く、また、一般の商用周波数を起用する低周波方式型よりも、20~60 kHz 交流電流を使う高周波方式のタイプがさらに高い。

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<熱サイクルと冷蔵庫>
家庭用に普及している冷蔵庫は、冷媒物質を内部で熱循環させ、機構内部の温度を下げている。
この熱循環は、常温気体である冷媒物質(かつてはフロン、現在はイソブタンなど)を圧縮して沸点を上昇させ=液化させて、その液体を放熱させ、また圧力を下げその液体の沸点を下げ=気化させ、この気化のさいに周辺から吸熱して機構を冷やす、というプロセス循環である。

なお、冷蔵庫の一般使用にては、この冷媒循環タイプにおける冷媒気体の圧縮コンプレッサの振動や音が永らく課題であったが、これに代わって、冷媒を用いずに、ペルティエ効果の熱移動特性を有する電子素子を活用した冷蔵庫が、開発され商品化も進んでいる。
ペルティエ効果の電子素子とは、半導体の接合点に電流が流れると一方の接合点における吸熱を他方の接合点で放出するという特性構造のもので、これによる熱移動と熱サイクルの効率向上が更に追求され続けている。

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<赤外線>
電化製品のリモコンは、0.5 ~ 1.2 mm/秒長の赤外線による、on/off デジタル信号の送受信システムである。
ただし、この信号そのものが記号コードや文字コードを成すのではなく、on/off の長短タイミングの組み合わせで 0/1 を2進法ビット送受信している (モールス信号のように)。

赤外線を活用したセンサーは、自動ドアや洗面台の蛇口などで、人間や物質の接近や移動の検知にも応用されている。
この対人および対物検知システムとしては、赤外線センサーには大別して2つの活用方式がある。
1つはパッシヴ型の赤外線センサーで、人体が常時発している赤外線の変化量を常に検出するもの。
もう1つはアクティヴ型で、センサー自身が特定方向に赤外線を発信し、その反射や遮り具合を検出するもの、こちらは赤外線をほとんど発しない冷たい物質であっても検出可能となっている。

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<レイリー散乱>
光がその波長の1/10より小さな粒子と衝突すると、光は散乱するが、この現象をレイリー散乱と称す。
太陽光は様々な波長光(電磁波)の合成であるが、それらが地球大気の主成分である窒素や酸素と衝突し、それでさまざまな波長光のさまざまなレイリー散乱がおこる。
或る光のレイリー散乱の発生角度は、その波長の4乗に反比例し、たとえば波長が長い赤色光よりも波長の短い青色光の方が8倍以上も散乱しやすい。

我々が地上から確認出来る空の色は、太陽光のさまざまな光成分のレイリー散乱、大気の組成物質、その地上との距離、および角度によって決まってくる。
大気の物質(窒素や酸素など)の90%以上は、地上から20km高度の内に高密度で存在しており、したがい太陽光のレイリー散乱もこの高度圏内にて頻度が極めて高い。
しかも青色光ほど散乱しやすいため、地上にいる我々からみれば、空のどの方面も一様に青く見えたりする。
なお、日の出や日没時における地上から見れば、太陽光は高度低いまま長い距離を経て地上に届き、その過程では青色光のみならず緑色光も黄色光も散乱してしまう。
よって、波長の長い(散乱頻度の小さい)赤色光が、一定方向から特に多く我々の目に入ってくる。

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<プラズマとオーロラ>
太陽から来るイオン荷電粒子(プラズマ)は、通常は地磁気のはたらきにより地球からかわされている。
だが、このイオン荷電粒子は磁場の向きによっては一部が地球の磁気圏に入ってしまう。
地球に引き寄せされたそのイオン荷電粒子は、ローレンツ力によって地球の磁力線の周りをぐるぐるらせん軌道を描きつつ落下、そうして高高度の酸素や窒素とぶつかる。
ぶつけられたその酸素や窒素は、エネルギー励起状態から基底状態に戻る過程で固有のスペクトル光を放出、これがオーロラ光と考えられている。
とくに窒素は赤と紫の光を放出、また酸素は赤と緑の光を放出する。
オーロラの発生は、高度100~500km、とくに極地地方に多い。

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<リニアモーターカー>
いわゆるマグレブ(磁気浮上)方式のリニアモーターカーは、車体に超伝導の磁石が搭載されており、いわばこの車体自身が超伝導磁石として駆動走行するシステムとなっている。
なお、この超伝導磁石はN/Sが互い違いに車体に並んでおり、どれも電気極性が一定のままで、N/Sの反転はない。
一方、地上の走行ガイドライン(車体をはさむ構造壁)両サイドには、電磁石が隙間なく連続してコイル状に埋め込まれており、リニアモーターカー車体の(超伝導磁石の)進行にあわせてこのコイル自身が電気極性をN/Sに反転し続け、これがリニアモーターカーの推進力を生みだしている。
さらに、この推進力コイルの上面に、上下一対ずつの浮上・案内コイルが付けられていて、こちらは走行中のリニアモーターカー車体の(超伝導磁石の)誘電によってN極とS極が交互にon/offを繰り返す。
ここで、リニアモーターカーは上側の浮上コイルに引かれつつ、下側の案内コイルによって反発し、浮上状態を保ちながら走行し続ける、とともに、これは左右の走行ガイドラインで常に逆の電気極性をとるため、リニアモーターカーの走行は左右の位置バランスも取られている。

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以上、本書における題材テーマのほんの一端だけを紹介してみた。
むろん、あくまで図解が主の本書であって、たとえばリニアモーターカーなどのダイナミックな技術製品は文面だけで概括することは困難であり、またそうすべきでもない。
むしろ、一般社会人はもとより大学生でも(さらに中高生でも)おのれの物理勘を大いに発動しうるであろう、本書はそのくらい簡素でありつつも、そのくらいフレッシュでスリリングな物理学入門編の一冊たりうるはずだ。

2017/06/04

死ぬまで吸おうぜ

タバコの副流煙は「本当に」人体に有害なのだろうか?
もちろん、危険とされる濃度が一応はガイドライン定義されていることくらいは、知っているよ。
しかしまた、完全な合意がなされていないことも、知っているのだ。
副流煙物質の「ほんの1分子(1粒子)」 が肌に付着しただけで、身体のどこかの細胞がガンになってしまうということが、「ありうる」 だろうか。
そこのところ分からぬ一方で、副流煙の分子は 「もう既に人間社会のあまねく処、あまねく物質に付着しまくっている」。
これで、実際にどうやって副流煙を隔離し根絶するのだろうか?

副流煙自身が 「ぼくは人間を必ずガンにするんだよ」 と人間の言葉で宣言してくれない以上は、それは人間にとってリスク可能性でしかない。
リスク可能性に留まっているからこそ、売買行為が頻繁になり、カネがぐるぐるまわり、よって法制化しやすい。
因果関係がハッキリ断定された事象に、カネが投資され続けるわけがないだろうが。

どうせウヤムヤな可能性でカネを膨らませて楽しむのなら、もっと発想を大きくぶち上げたらどうだろうか?
たとえばだが。
たばこそのものの成分には、あるいは人体に望ましい生理学上の効用がある ─ かもしれない。
つまり人体内に、 「たばこと反応して良い効果をもたらす酵素」 がある - かもしれぬ。
で、あるのなら、そういう酵素を煙状にして大気中にばらまき、たばこの副流煙と反応させてだな…
これなら、たばこ副流煙の健康問題は、論理的には解決だ。
物理的に現実性があるかどうかは、知らぬ。

 ついでに。
「たばこの煙を触媒とした自動車」っていうのは、どうだろう?
運転者が(あるいは同席者が)たばこを吸うと、それがうまく、こう、排気ガスを浄化させる、いやどうせなら、エンジンの内燃効率を引き上げる、というようなものだ。
Marlboro とか Lucky Strike といった商標ロゴを入れて疾走すれば、かっこいいじゃないか、それでたばこの売上だって伸びる、かもしれない、だから税収も増える、かもしれない。
「この自動車は、たばこの煙で走っています」 と宣伝すれば、東京オリンピックで素晴らしい呼び物になり、本当はたばこ吸いたくてウズウズしている欧米人などは、こぞって乗車したがるかもしれないぞ。

そういう研究、どこでやってるのかって?
知らねえよ、あくまで発想だって言ってるだろう。
なんとかビジネスにでっちあげりゃいいんだ。


以上

2017/05/30

【読書メモ】 すごい!希少金属

『すごい!希少金属 斎藤勝裕・著 日本実業出版社』
本書はレアメタル/レアアースにかかる化学技術の紹介本であり、化学の基本から応用まで説き起こす文面が要約的で分かりやすい。
とりわけ特筆すべきは、レアメタル/レアアースの採掘から製品化にいたるまでの工程論、その概括紹介であり、更なる新素材研究へのチャレンジも本書内の随所にて称揚されるなど、産業観(さらに産業勘)が図抜けて素晴らしい。
また、国策としてのレアアース備蓄をはじめ、採掘先や代替素材の再検討など、戦略思考も喚起されている。

なお本書は2016年3月に初版発行であり、引用されている素材の調達や活用の事例詳細については、著者が書中でもほのめかしているように随時ウォッチの必要があろう。

以下に、僕なりに概括し、読書メモとして記す


<定義>
・いわゆるレアメタル=希少金属は、化学的には厳密な定義は無い。
まずは地殻中の存在量が希少であり、また精錬・単離が困難である元素、という点から定義されうる。
じっさい、レアメタル元素は地殻中の存在比率(クラーク数)が1%未満で、量的に希少である。
だがそれ以上に、産出地域の偏在こそがレアメタルの重大な定義根拠であり、マイナーメタルとも称される所以である。
(存在比率が0.01%と極めて小さい銅元素は、産出地域は偏在していないためかレアメタルとはされていない)。

・レアメタルには47の元素が指定されており、そのほとんどは13族~16族の金属元素。
金属元素ではないホウ素やセレンやテルルも含まれる。

・レアメタルの47元素のうち、17の元素がいわゆるレアアース=希土類であり、それはスカンジウム、イットリウム、およびランタノイド系の15元素である。
このうち特にランタノイド系15元素は、化学属性が極めて近似しており、これらは典型元素や遷移元素とは比べ物にならぬほどに単離が困難。

・さらにレアアースは、重希土類軽希土類に分けられる。
重希土類は、スカンジウム、イットリウム、およびランタノイド系のうちガドリニウムからルテチウムまで。
軽希土類は、ランタノイド系のうちランタンからユウロピウムまで。

・レアメタルは電気陰性度は2.4以下であり、陽イオンになりやすい。
とりわけレアアースのランタノイド系元素は電気陰性度が1.07~1.27と極めて近似している。
またレアアースは金属イオンとして、pH値の大きな塩基性の水と反応し水酸化物となる。

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<埋蔵>
・世界のレアメタルの埋蔵量は、中国が42%、ブラジルが17%、インドが2%…など。
ところが産出量を国別にみると、タングステンは82%が中国、リチウムは36%がチリ、白金は70%が南ア、ニオブは89%がブラジル、ベリリウムは92%がアメリカが占めるなど、極端な偏りがある。

一方、レアアースの埋蔵分布は、軽希土類では世界広範にわたるが、重希土類は中国の特定地域にのみ極端に集中している。
かつ、産出量もなんと全世界の84%が中国である。

・レアアースを含む鉱石は、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、およびイオン吸着型鉱である。
これら鉱石のうち、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイムは、地下のマグマに含まれていたレアアースが数億年かけて地表に移動したもの。
これらはアメリカ、インド、オーストラリア、マレーシアほか、世界中で採掘されるが、ウランやトリウムなどの放射性元素を含む。
一方、イオン吸着型鉱は、レアアースを多く含む花崗岩が数百年かけて粘土質になったもので、放射性元素をほとんど含まず、特に中国に多い。

・水深3,000~5,000メートルの海底熱水鉱床に、マンガン団塊と称す金属元素の塊があり、これがマンガンはじめ各種のレアメタルを含んでいる。
(マントル成分を含む熱水の元素が海底で固まり生成されたと考えられている。)
この深海のマンガン団塊は、海に囲まれた日本にとっては重要なレアメタル源たりえ、レアメタルへの競争性を鑑みればこの採掘技術が待たれる。

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<精錬・単離>
・一般に、採掘したレアメタル/レアアースの鉱石は、製錬によって目的の金属部分を取り出しつつ、そこから精錬により不純物を取り除く=抽出目的の金属を単離する。

・通常の金属鉱石の精錬は、「溶融精錬法」によって目的金属を遊離する。
これはたとえば、硫化物鉱石では酸素と反応させて二酸化硫黄として揮発させ、目的金属を遊離したり(酸化法)、あるいは、酸化鉱物中の酸素を一酸化炭素と反応させ二酸化炭素として揮発させ、目的金属を遊離する(還元法 - 製鉄など)。

また、多くのレアメタルでは、「揮発精錬法」も用いられており、これは鉱石を加熱、まず気体化し、それをあらためて冷却・固体化する過程でレアメタルを単離する方法。

・ところがレアアースは、それぞれの元素の化学属性が極端に近似しているため、溶融精錬でも揮発精錬でも完全には鉱石を精錬・単離しきれない。
そこで、レアアース鉱石に対しては更に精度の高い精錬方法が採られている。

まず、レアアース鉱石を細かく砕いて、硫酸や塩酸などの水溶液に溶かす ─ 「陽イオンの水溶液状態としおく」。
そして、この陽イオン水溶液にさまざまな有機溶媒を加え、激しく振って、水溶液内のレアアースを水溶液から分離させ有機溶媒に移動させる。
あるいは、この陽イオン水溶液に沈殿試薬を加えて、レアアースを結晶として沈殿させる。
あるいは、この陽イオン水溶液を高分子のイオン交換樹脂に混ぜ、レアアースをこの交換樹脂に付着させた上で、そこに溶離剤を流し込んで、目的のレアアースのみをこの溶離剤に移動させる ─ これがイオン交換法で、もとは放射性元素の分離技術として開発されたもの。

・さらに、固体金属状態のレアアース鉱石を加熱・溶融して分離させる方法もある。

・これら鉱石からのレアアース精錬のプロセスにて、放射性物質による被曝リスクが重大なネックであり続けている。
中国の産出が突出して多い理由は、国策として資本集中投下してきたこと、また放射性物質からの被曝リスクに(先進国ほど)鋭敏ではなかったこと。

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<用途>
・レアアースのうち、軽希土類の用途は、コンデンサ、水素吸蔵合金、超伝導素材、光学ガラス、など。
一方、重希土類の用途は、光ファイバ増幅器など。

・金属加工や研磨をはじめ、土木工事の掘削用途の刃として、超硬合金」が欠かせない。
超硬合金は、チタン、バナジウム、タングステンなどのレアメタルを金属粒子とした上で、それらを焼結して作る。

・ジェット機や自動車のエンジンには、1000℃以上の高温状態にても熱や酸化に負けない「超耐熱合金」が用いられる。
超耐熱合金の主成分はコバルトやニッケルで、ここにクロム、モリブデン、タングステンなどレアメタルが加えられて作られる。
さらに最近は、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタルなど融点の極めて高いレアメタルから成る合金が開発され続けている。

・レアアースに光エネルギーを与えると、そのエネルギーによって電子励起し、10,000分の1秒ほどで基底状態に戻るが、この瞬時のプロセスで余分なエネルギーを発光放出する (これがいわゆる蛍光)。
この電子励起から基底までのエネルギー状態を、極めて長時間にわたり安定させ発光し続けるのが、夜光塗料」である。
近年日本で開発された優れた夜光塗料には、ユウロピウムやジスプロシウムなどのレアアースが起用されている。

レーザーの発振源のうち、固体の素材としてレアアースが用いられている。
よく知られたYAGレーザーの発振源は、イットリウムとアルミニウムがザクロ石型の結晶構造をとっている。
ルビーレーザーやサファイアレーザーも、固体の発振源レーザーであり、クロムやチタンが活かされている。

・現在、ほぼ全ての強力磁石に、レアメタルとレアアースが用いられている。
例えば、かつてよく用いられていたサマリウムコバルト磁石は、サマリウムとコバルトを原料とし、200℃状態でも使用出来るもの。
また、ネオジム磁石はネオジムとホウ素(どちらもレアメタル)および鉄で出来ており、現時点で最も強い磁力を持ち、かつ実用性に優れた強力磁石であるとされる。
ネオジム磁石は家電はむろん、自動車の駆動モーターや発電機にも用いられるなど、主要工業製品の高性能化かつ小型化を実現してきた。
なお、プラセオジムとコバルトから出来るプラセオジム磁石は、さらに高い強度をもち、製品化が研究されている。

・元素として半導体の性質を有する、いわゆる真性半導体元素には、シリコン、ゲルマニウム、セレン、テルルなどが該当する。
これら真性半導体元素に不純物を混ぜて電気伝導度を高めた製品が、いわゆる不純物半導体であり、これらがn型とp型という電子回路特性を有する。
たとえば、価電子4個のシリコンに価電子6個のセレンやテルルを混合した不純物半導体は、全体として電気的にシリコンよりも価電子が増え、よってn型半導体となる。
またシリコンにホウ素とガリウムなどを混合する不純物半導体は、全体として価電子はシリコンよりも減ってp型半導体となる。

数種類の金属元素を化合させた化合物半導体が開発すすめられているが、いずれにせよ、14族の元素であるシリコンに13族~16族のレアメタル金属元素が多く混合される組成である。

太陽電池は、p型半導体とn型半導体を接合し、かつ負極にインジウムの透明なITO電極をおいた構成。
太陽光がITO電極をいったん透過し、p型/n型の接合面に至ると、ここで電子と正孔が生成され、それらがあらためて電極にまわり、こうして電流が発生する。

一方、LED(発光ダイオード)はこれとは逆に、電極から電流を流し、p型/n型の接合面で電子と正孔が合体することで光エネルギーを起こす構造である。
これと同じエネルギー発光を、有機物を活かした半導体で実現するのが、有機ELであり、有機ELでは有機物とレアメタル金属の反応が活かされている。

なお、インジウムは数年前までは日本が世界一の生産国であったが、現在にては、高温の地中深くまで掘り下げての採掘が必要となり、生産までのコストが見合わなくなっている。

・自動車の排ガスに含まれる窒素化合物NOx、一酸化炭素、および未燃焼の炭化水素、これらを分解する触媒を「三元触媒」と称す。
この三元触媒は、NOxを窒素と酸素に分解し、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、炭化水素を二酸化炭素と水に酸化させるもので、成分はプラチナ、パラジウム、ロジウム。
ただし触媒の作用機能はよく分かっていない。
(※ この箇所を読んでいて、とっさに思い出したこと ─ パラジウムやロジウムなどを起用したいわゆるインテリジェント触媒なるものが開発されており、酸化/還元反応をきわめて精妙に実現する由、表面科学についての本に要約されていた。参考まで。)

・2010年ノーベル化学賞の根岸・鈴木両氏の受賞対象研究は、分子のクロスカップリング反応技術で、これは複数にユニット化された分子をさらに合体させる技術であり、触媒にはパラジウムが多く用いられている。

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…以上、p.158までごく大雑把ながら僕なりにまとめてみた。
本書p159以降にては、レアメタル及びレアアース各元素について産業用途に主眼をおいた概括あり

本著者はさらに、アメリカなどと比べて日本の国家安全保障への意識が低く、レアメタルの備蓄にて日本が出遅れており、これが工業技術・製品競争において常に日本の不利益をもたらしかねぬ ─ と危惧されている。
一方では、レアメタルを含む電子機器が日本の大都市部に「既に」大量に存在していること、ゆえに、それらのレアメタルをリサイクル利用すれば天然鉱石から精錬・単離するより遥かに効率がよい由、リマインドされている。
(これは日本の大都市をいわば「都市鉱山」と見做してのアプローチであり、じっさいに2013年に小型家電リサイクルも法制化されている由。)

以上

2017/05/27

【読書メモ】 新・単位がわかると物理がわかる

『新・単位がわかると物理がわかる 和田純夫・大上雅史・根本和昭 共著 ベレ出版』
本書は、国際度量衡総会による物理単位系の2018年の改定を見据えた、2014年の刷新版である。
そもそも「物理(学)」とは自然現象そのものではなく、自然現象の論理表現だ、つまり、大きさ、重さ、速さ、熱量といった物理単位系の論理的な組み合わせである。
それら組み合わせの意味を「解釈」することこそが、物理(学)であり、ここのところあらためて留意し念押ししているのが本書である。

むろん、物理単位系については、高校教科書ないし参考書類にも記載あり、様々に想定/確認してきた学生諸君も多かろう。
そこで、とりわけ学生諸君にはあらためて考えて欲しいのだが ─ 
物理上の実体を表現する「単位」はもともとは実測値の集約であったはず、しかしながら物理現象(エネルギー)の概念化と実測技術がむしろ精度を増すにつれて、単位の側に論理上も実数上もほころびが顕れるもやむなし、だからいまや逆に単位の側を組み立て直している…と、これは物理学の宿命的な展開ではないだろうか。
本書の存在意義のひとつは、まさにこの「あまりにも普遍的な新しさ」のリマインドにあろう、じっさい、間近に(2018年)せまった根元単位の再定義(新たな1キログラム、クーロン量、アヴォガドロ定数やボルツマン定数の定量化など…) は、極めて高精度な物理学ながらも極めて卑近な単位尺度でもあるのだ。
尤も、本書引用のエネルギー式や状態方程式などは、いずれも比例/反比例関係を見極めれば、多くは観念捕捉しやすいレベルに留められており、複雑な数学操作はほとんど提示されていない。

とまれ、以下に僕なりにざーっと読書メモを記す


<単位系の概括
物理単位には、個別独立した単位と、それらによる組み立て単位がある。
たとえば、ニュートン以来の「運動方程式」 にて、力つまりニュートン N は 質量(加速されにくさ) と移動距離 と時間 それぞれ別個の基本単位 m, kg, s による組み立て単位であり、1N = 1kgm/s2 である。
これをもとにした「位置エネルギー」も、力 N と移動距離 と質量 と 速さ(加速度x時間) の比例/反比例による組み立て単位として、まとめて J(ジュール)単位で表し、1J = 1Nm = 1kgm2/s2
 となり、やはり基本単位 m, kg, s の組み立て単位。
万有引力もクーロン力も分子間力も核力も、位置エネルギーとして、Jで表現出来、さらに「運動エネルギー」がこれに比例し、1/2 x 質量 x 速さとしてやはり m, kg, s の組み立て単位で表現。

ここで電流アンペア(A)をどう扱うか。
別個に独立した m, kg, s の各基本単位から(上の N のように) A を組み立てる方式が3元単位系であり、A も別個の独立単位として MKSA の4つそれぞれを基本単位とみなすのが4元単位系である。
普及している SI 単位系は4元単位系である。

とくに、自然単位系という着想もあり、これは上の基本単位同士でさえもが直接の換算関係にある、というもの。
これは量子力学以降に考慮されてきた単位解釈である、が、それではあらゆる単位そのものがたった1つの絶対尺度に収斂するか、となると、様々な物理現象や実測値を鑑みるかぎりそんなことはありえない。

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<キログラム、アヴォガドロ定数>
地上の「キログラム原器」に 1kg重 の重力がはたらきつつ、ちょうど 1m/s2 の加速度で運動しているとする。
質量は力 / 加速度であるから、この「キログラム原器」の質量は、重力 / 加速度から (1kg重)/(1m/s2) = 1kg重・s2/m の単位で表現出来る。
じっさいに、この「キログラム原器」の、地上の重力加速度 g 9.8m/sにおける質量を換算すると、1kg重 / (9.8m/s2) = 0.102・・・(kg重・s2/m) とみなせる。
とはいえ、そもそも地上の重力は場所によって0.5%くらい誤差がある。

一方で、アヴォガドロ定数(NA)の実数が分かってきた。
完全なシリコン結晶とX線による密度と体積の測定によるもので、このシリコン結晶の原子1つあたりの平均体積と、1モル量あたりの体積を実測。
これにより、1モル中のアヴォガドロ定数 NA = (6.02214129±0.00000027) x 1023 個 / モル。
とはいえ、これとて 「キログラム原器」 と同様に、精度は1億分の5ほどの誤差を残す。

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<プランク定数と 「新」キログラム>
そこで今後は、「新たな」キログラム質量単位をアヴォガドロ定数と別個におき、また現行のアヴォガドロ定数/現行のモル量の定義は放棄する、と既に方針が定まっている。
そこで起用されるのが、量子論の「プランク定数」を用いる質量定義方法である。

エネルギーと(電子などの)粒子振動数の関係は、エネルギー = プランク定数(h) x 振動数(振動回数 / 時間)
エネルギー単位ジュール(J) を、従来の長さと時間と「キログラム原器」で表現すると、J は kgm2/s2  の組み立て単位である。
だから、両辺に時間を掛けて、プランク定数(h)単位は J・s = kgm2/s で表現出来る。
このプランク定数の実測は、これまでワットバランス法(磁場と電流と電磁波をもとに電磁波の振動数と起電力と電流の相関をはかるもの)によってなされてきた。
それによるプランク定数の最新の実測値は、h = (6.62606957±0.00000029) x 10-23 kgm2/s

ところが、プランク定数とアヴォガドロ定数をあわせて、もっと精度の高い実測が既になされている。
それは、プランク定数とアヴォガドロ定数の積を、光速度と電子1モル質量と電気力とリュードベリ定数の積/商を以て比較精査する方法で、すでにワットバランス法同様の誤差範囲に至っている。
これにより、アヴォガドロ定数の厳密な実測値が出る、それによってプランク定数の実測値もヨリ精密になる、だから「新たな」キログラムの実測値も出ることになり、これが2018年に見込まれている。

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<電磁方程式、クーロン(C)、アンペア(A)>
電磁力の法則は、電流の大きさと電流間の距離とその導線の長さを関係づけるもの。
導線長Δに働く電磁力 = 2 x 或る比例定数´ x 電流2 / 電流間の距離 x 導線長Δ
ここで、電流間の距離を 1m 、導線長 1m として、働く電磁力とその電流の関係を定義しており、電磁力が 2 x 10-7 N となる電流を 1アンペア(A) としている。

電気量クーロン(C) は電流とx 時間(秒)の積、つまり 1C = 1A x 1s の関係から、電子の負電荷(および陽子の正電荷)の電気素量 (e) が定められてきた。
しかし現在、電気素量 (e) そのものが精密に計測されており、それは e = 1.602176565 x 10-19 C
これに合うように電気量クーロンを再定義しよう、そしてさらに電流アンペアを再定義へ、というのが2018年に向けての動向である。

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<絶対温度、ボルツマン定数>
ボイルの法則とシャルルの法則から、「理想気体」にては、温度が一定なら圧力に反比例して体積が縮み、圧力が一定なら絶対温度(Kケルビン)がゼロの時に体積がゼロになる。
この理想気体の状態方程式は、圧力 x 体積 = 気体の物質量(nモル数) x 或る気体定数 R x 絶対温度 K という比例/反比例関係である。
気体定数 R はエネルギー単位で、従来は、氷→水蒸気に一気に昇華する気圧611Pa と絶対温度 273.16K のそれぞれの上限値(いわゆる三重点)から演繹し、実測値から気体定数 R のエネルギーを 8.3144・・・J/(mol・K) としてきた。

状態方程式から、絶対温度 = (圧力 x 体積) / (気体の物質量nモル x 気体定数R) となる。
しかしここで、エネルギー単位である気体定数Rを人為的にあらかじめ決めてしまおう ─ というのが現在の動向。
そのためにまず物質量nを、モル数ではなく、気体分子の個数N / アヴォガドロ定数NA とし、気体定数 R / アヴォガドロ定数NA であるいわゆるボルツマン定数 KB をエネルギー単位として定義する。
そうするとこの式は、分母の(気体の物質量nモル x 気体定数R) を書き替えて、絶対温度 = (圧力 x 体積) / ボルツマン定数KB x 気体分子個数N と再定義出来る。
これでボルツマン定数KB = 1.380・・・x 10-23 J(ジュール) / K(絶対温度) と定量的におくことが、2018年から想定されている。

実際の 圧力 x 体積は、(2・分子個数N / 3) x 分子温度であり、(ここでは分子間力は無視するとして)、これは (N/m2) x m3  = N・m = Jジュール となってエネルギー単位になる。
さらに 2・N / 3 x 分子温度は分子1つあたりの平均エネルギーで、これも単位は Jジュール となる。

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<量子論、自然単位系>
相対性理論では、空間と時間を一体としてみなすが、これがいわゆる自然単位系の概念と通じている。
たとえば - 距離の組み立て次元として時間を単位化し、これを 「時間距離」 とする。
時間距離 = 光速(c) x 時間 となるが、ここで光速(c) は速度であるから、これも距離と時間の組み立て次元単位である。
光速の実測値は c = 299,792,458 m/s だが、これをズバリ1単位とすると、1s = 299,792,458 m とも表現出来る。
こうして、相対性理論に則れば、基本単位である s と m の間でさえもが直接換算が出来るようになった。
これが自然単位系の発想である。

では、量子レベルでの粒子のエネルギーと振動数の関係も、自然単位系として直接換算し合えるだろうか?
量子論では、粒子の運動プロセスが起こる可能性を 「作用」 と称し、エネルギーと時間(s)で表現出来る。
この 「作用」 と プランク定数(h)実測値 と時間(s) と質量(kg) の関係につき、自然単位の発想でそれぞれの単位を基本1単位とおいてみる。
するとなんと、1kg = 1.054… x 10-34kgm、また、1kg = 9.482… x 1033s / m2 となり、3つの基本単位 m と kg と s 間にて直接換算可能になる。
さらに上の光速における基本単位 s と m 間の直接換算での値を代入すると、1kg = 2.482…1042m-1 となり、2つの基本単位 kg と m が直接換算可能になる。

それではあらゆる単位そのものがたった1つの絶対尺度に収斂するか、となると、様々な物理現象や実測値を鑑みるかぎりそんなことはありえない。

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… 以上、p.214まで、僕なりに拙い知識を動員しつつ(最後は半ば意地になって)まとめてみたが、もう限界だ、ここらで僕は降参。

本書はまだまだ、電気力と電気量にかかる原子単位系と『微細構造定数』や、万有引力についての『重力定数』、プランク定数にかかる長さと時間と質量などなど…自然単位系での表現はありうるかなどについて論が進んでゆく。

なお、高校レベルまでの物理の教科書に(あまり)記載されていない電磁波としての光エネルギー単位と、音圧と周波などについて、さらに放射線についても、本書では各単位表現の意義につき概括がなされている。
※ とりわけ、光エネルギーのヒト側での比視感度=光束(ルーメン)、その光束と立体角(ステラジアン)から導かれる光度(カンデラ)、また光束と半径距離と照射面積から算出される照度(ルクス) については、とくにこんご光学関係のイノヴェーションが一層進むことも勘案し、ぜひ学生諸君には一読をすすめたい。

2017/05/11

奇跡の花束

遥か、遠い遠い、昔の話。
ある女が、花を贈るという行為を思いついた。
しかし、1本だけ贈るというのは、なんだか寂しい気がしたので、庭に生えている花からこれはという綺麗な2本を選び、それを摘んで、贈ってみることにした。
誰に贈ればいいのかしら ─ ああ、そうだ、あの、いつも素っ気ない彼がいい。
はて、自分の名は記すべきだろうか…いや、やめておこう。
善意の誰かさん、そういうことにしておこう。

さて、これを受け取った男は、最初はちょっと驚いたが、やがてこの楽しさに気付く。
そうだ、このたった2本の花でも、俺はちょっと幸せな気分、それじゃあ…うむ、俺は4本を束にして、誰かに贈ってやろう。
誰に ─ ああ、そうだ、あの、いつも無愛想なあの女がいい、彼女にしよう。
彼は庭先の花を4本摘んで、それを束にして。
さーて、俺の名前は、明かすべきだろうか。
いや、やめておこう。
善意の誰かさん、そういうことにしておけばいい。

これを受け取ったその女は、はじめは、おや、と訝しく思ったことだろう。
この4本の花の束は、なんの意味だろう、何かの知らせだろうか…でも、悪い気はしないわ、むしろ歌でも歌いたい気分。
そうだわ、どうせならこの楽しさを倍にして、などとひとりごちながら、彼女は庭先の綺麗な花を8本摘んで、それを束ねてみたことだろう。
さて ─ これを誰に贈ろうか?
そうだ!と、彼女はくすくす笑いながら思いついたに違いない。
あの、いつも静かに頑張っている彼がいい、きっと喜ぶことだろう。
あたしの名前は、どうしよう…うむ、やはり隠しておこう。
善意の誰かさんから、そういうことでいいわ…。

とつぜん8本の花束を贈られたその男は、びっくりしたことだろう。
いったい、これはどういう意味だろう、何かの暗号だろうか?
しばらく逡巡していた彼は、やがて、はっと気づいたことだろう。
きっと意味なんか無い、いや、これ自体が意味そのものなんだ、そうだ、そうとしか考えられない。
幸福、希望、そしてこの世への感謝、それらの全て、それがこの花束。
それじゃあ俺は、うむ、俺なら。
もちろん、やがて彼の腕の中に束ねられた色鮮やかな花は、16本に決まっているのであって…
俺の名は、どうしよう、いや、善意の誰かということしておけばいいんだ。

彼からその16本の花束を贈られたその女は、最初は驚いたものの、やがて32本の花束を ─ もうこのあたりになるとちょっと分けて束ねて、それをある男に贈り、その男も花束をいくつかに分けて束ねて64本、それがある女のもとへ届けられ……。
もう分かったことだろう。
この、善意の花束のお話は、今もずっと続いている。

え?あたしのところには、まだ届いていないって?
とっくに届いているでしょう?
色も香も姿形も、大きく変わってきたものの、あなたのところにも善意という名の奇跡の花束はどっさりと届けられている。
それどころか、あなただって、その奇跡を倍にして誰かに分け与えているのだ。
このようにして、世界は奇跡で出来ている。
あまりにも当たり前すぎて気づかない、だから奇跡なのだ。


(ちょっと星新一らしくまとめてみた。)

2017/05/06

しましまソックス

高2に進級して間もなくのこと。
クラスに転校生がやってきた。
それも、女子である。
しかも、勉強が得意。
かつ、そこそこの美人タイプ、さらに気取り屋で、どうも、最初から気に入らない娘であった。
とりわけ鼻についたのが、彼女の英語の流暢きわまるアクセント…いや、もっと不快に映ったのが、毎日のように穿いている派手なストライプの長靴下。
なんだ、気取っているくせに、軽薄な…。

ところが、なんとなんと!
彼女が越してきた新居は、僕と同じマンションであり、しかも、同じ5階であり、かつ、僕の室の真向かいとなってしまったのだ。
そんなこと、学制上ありうるのか…それが、ありうるんだよ。
厳密には、彼女は両親とではなく伯父伯母と同居していたのだが、そのあたりは略す。
ともあれ、どうもしっくりしない日常が始まったのである。


たとえば。

朝の通学時間、まったくの偶然なのだが、こちらがドアを開けるまさにその同じタイミングで、あちらもドアを開けて、彼女がすっと姿を現したりする。
目が合うと、どうもつんとしている。
それでも僕から、「おはよう」 とぶっきらぼうに声をかける。
すると彼女が、つんつんした口調で寄越して返す。
「あんたって、スパイみたい。あたしに時間を合わせているの?もしかして、あたしのこと監視してるんじゃないの~?」
こういう態度にむかっときて、僕が無言で足早にエレベータに向かうと、彼女がスタスタとついてきながら、「あんたさぁ、男なんだから、階段で下りていきなさいよ」 とも。
「そうするよ」 と捨て台詞で僕が階段に向かっても、彼女はうんともすんとも返答せず、シマシマの脚でエレベータに乗り込んでしまうのであった。

とはいえ、最寄りのバス停でまた一緒になるわけだが、お互いにこんなふうだから、むしむし、学校近くで下車しても黙ったまま。
むろん、教室内でも知らんぷりであった。


☆   ☆

さて。
5月の連休明け、恒例行事である駅伝レースの時節となった。
これは、郊外からかなり奥まったところ、山の湖畔の起伏激しい林道を、クラス対抗リレーで競争するというもの。
クラスごとに男女2人づつ計4人の混成チームで、1人が8kmづつの周回リレーである。
この対抗リレーに際して、我がクラスではなんと僕がメンバーの一人に選ばれたのである。
学級担任いわく、足が速い奴ばかりじゃつまらんだろう、と。
おまえは最終走者に任命する、せいぜいレースを盛り上げてくれ、おまえなら頑丈だからなんとでもなるさ、アハハハハ…
それで、強引に役回りを押しつけられてしまった。

たかだか8kmくらい、なんとでもなるさ、といったんは安心してはみたものの。
しかし、問題のコースは平坦な道路とはわけが違うし、毎年のように途中棄権者も出るくらいなのだ。
とくに女子がしばしば棄権していた ─ そういう走路なのである。
だから僕もちょっと不安になり、レース本番の1週間前に、自転車でぐるっとコースを周回してみたのだった。
なるほど、確かにキツそうだ…本当に走破出来るだろうか、やっぱり出場辞退しようか。
でも、いや、やはり、だが、そんな、こんな…と思いあぐねつつ。
コース中盤の登り坂にさしかかったところで、ふ、と発見したものがある。
舗装路からさりげなく脇にそれる小さな石階段、その先にある小さな家。

家と見紛えたそれは、ちっぽけな木造の講堂 ─ いや、聖堂であった。
宗派などは分らなかったが、つくりからしてたぶんキリスト教会だろう。
周囲の草は無造作に伸び茂り、壁も窓も屋根も崩れてはいなかったものの、木製のドアも床面もきぃきぃと軋み、室内に踏み入ってみれば中はガランドウ。
調度品は無く、ただ古びた机とイスが幾らか並んで置かれているのみであった。
どういう由緒でこのようなところに、と不思議でならなかったが、同時にまた、わけもなくひとつのイメージが僕の脳裏に浮かんでいた。
「ウサギとカメの物語、ウサギはきっとここでお休みだ、あははは。


☆   ☆   ☆

さて。
レース当日、まさにその朝になって。
高校に参集した僕たちは、メンバー女子の1人が体調不良で出場出来ぬことになったと知らされた。
そこで、と、学級担任が驚くべき打開策をぶちあげた。
なんとなんと、「転校生の彼女」 を選手起用するという。
いわく、彼女は以前の高校でテニス部に所属していた健脚で、しかも今回のレース代走選手に自発的に名乗り出た由である、と。
これは僕にとって二重三重の驚きであった。
彼女が、高らかに宣言した。
「厳しいコースであることは分っているつもりです。でも、このクラスの一員にふさわしくしっかりと走り抜けるつもりです。よろしくお願いします」
「君は第三走者だ、たのむよ」 と学級担任が声をかけた。
「ハイ、分っています。最終走者は…彼ですよね」
彼女は僕を一瞥すらせず、つ、と指だけをこちらに向けた。
僕はむかっとした。

いよいよ、現地入り。
レース開始は、14時。
スタートラインに選手たちが集合し、つられて、僕も参列した。
号砲が打ち鳴らされ、第一走者の女子選手たちがスタート。

☆  ☆  ☆  ☆

第一走者の女子が戻ってくるころには、我がクラスはトップから3分以上も差をつけられた最下位で、第二走者の男子はさすがに陸上部ゆえ若干は挽回したが、やはり遅れ気味だった。
そして、ついに彼女の出番。
「一人でもいいから追い抜いてこい、そのつもりで行け!」
学級担任の激励の声を背に、彼女は軽やかに駆け出した。
あっ、と僕は気づいた ─ なんだ、あいつ、ジャージの下からいつもの派手なストライプのソックスがちらちらと。
僕は内心で失笑していた。

15分ほど、経った頃だろうか。
にわかに空がどんよりと曇り、と思えばもう強風が吹き始め、やがて雨がぱらついてきた。
たちまちのうちに、信じられないほどの横殴りの大雨となり ─ 僕たちは一斉に建屋の中に避難した。
「ひどい雨になったなぁ。気象庁はなにやってんだ」
「どうしましょうかね、レースはいったん中止にしたら」
「この雨はすぐ止むよ、続行、続行、大丈夫だ」
などなどと、教員たちが口早に議論していたが、山の奥に否妻がビカリと閃光し雷鳴が地響くや否や、やはりいったん中止にしようとの結論にいたった。
即座に、各地点で待機している教員たちに連絡がとられ、走者をいったん車の中に退避させる段となったのだが。
ここで、僕たちの学級担任が電話片手に慌て始めたのである。
「えっ!?あの娘が見当たらない!?そんなわけないでしょう、いまは…中間地点あたりを走っているはずで…」
激しい横殴りの雨は止む気配を見せなかった。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

これは、さしもの彼女も、ちょっと可哀そうかもしれないな、こんなすごい豪雨の中でずぶ濡れの一人きり、誰も制止せぬままに走り続けているのかなぁ、さぞや心細いだろうに…と僕は想像していた。
そのうち、僕はぼやっと思い返していた ─ マンションの対面の部屋で伯父伯母と暮らしている彼女の姿、あの気取った顔や口調や仕草、小馬鹿にしたかのようなシマシマストライプのあのソックスなど。
そして、とつぜん僕は、あっ!と、それこそ雷撃のように閃いたのである。
彼女、何かアクシデントがあったのだ、ケガをしたのでは…それでどこかに退避したのだ…どこへ?どこへ?うむ、彼女なら!あいつなら!きっとあそこに身をよせている、あの脇道の、あの 「聖堂」 を咄嗟に見つけて、あそこに退避しているに違いない!
この直感、ハッキリした理由なんか無いが、絶対にそうだ!
僕はもう学級担任に向かって、半ば怒鳴るようにその旨を口走っていた。

「見つかったそうだよ」
学級担任が電話を切りしなに、僕に言った 「おまえの言うとおりだったよ。あの娘、足を軽く捻挫してね、それで、聖堂跡に逃れて、一人で雨宿りしていたそうだ。いやぁ、よかった、大事に至らず、本当によかった…。でも、おまえ、よく分ったなあ」
やっぱりそうか、と僕は我ながら奇妙なほど冷静に納得していた。
レースは、そのまま雨天中止となった。
彼女はといえば、教員の車で戻ってきて、僕と目を合わせると、消え入るような声で 「ありがとう」 と云った…ような気がした。
言葉はともかくも、彼女が掌中のグシャグシャのタスキを僕に手渡した際に、僕は感動、いや感傷、いや、なんというか、さまざまな無形の思念のかたまりが胸中にどかんとこみあげてきて、彼女に初めて親愛を覚えたのである。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

翌朝のこと。
僕がドアを開けたそのタイミングで、またしても彼女の室のドアが開いた。
「おはよう」 と僕が声をかけたら、彼女はいつものように、つまり、ニコリともせずにうそぶいた。
「ま~た同じ時間に出てきたのね、あんたさぁ、あたしのことスパイかなにかしているわけ?変なの~。」
「そうだよ、まあ、そんなふうなもんだ」
僕は彼女の、意固地なまでのシマシマソックスを軽く一瞥して、それから無言で階段に向かった。
彼女は黙ってエレベータに乗りこんだ、と思いきや、その朝は(その朝だけは)、僕のあとから階段を下りてきた。
「おい、捻挫しているんだろう、無理するなって」
「そうよ。だから、肩を貸してよ」
「分かったよ」
ぶかっこうな二人三脚で、彼女と僕は一歩一歩、階段を下り、そのままバス停まで手をつないで歩いていった。

それから ─ いや、話はこれでおしまいだ。
彼女とはやはりつっけんどんな関係で、それでも学級担任だけはニヤニヤと楽しそうだったが、僕にとっては大した思い出もなく、そんなうちに彼女は両親の住むニューヨークに留学するとかで去っていった。
以来、彼女とは再会することもなく、連絡をとるすべもない。
しかし、そんなことせずとも、僕は彼女とどこかで不思議な同期をとっているんじゃないかな ─ と彼女も時おり思い出して、軽くため息つきながらもクスクスと笑っているような気がする。

(おわり)


2017/04/29

慶應 環境情報学部の英語 (2017)

以下に記した英文の全体ないしは一部および単語は、慶應環境情報学部の最近9年分の一般入試出題から、特に「これは重要」と考えられるものを列記したもの。
(なお、主要な英文誌の掲載コラムなどから鑑みて特殊性が高いと思われるものは含みません。)
来春の入試本番に際して、自分がどの範疇の表現・語彙に強いのか、あるいは弱いのか、現時点での学力チェックシートのつもりで、辞書を用いずにどれだけ訳せるか試してみましょう。
さあ、頑張りましょう。


【 2017-I 】
早稲田理工の出題英文でも取り上げられた "moral dilemma" についての論、ただ本テキストの方が論旨がコンパクトで明瞭である。
  • a self-driving car
  • This scenario and many others pose moral and ethical dilemmas that carmakes, car buyers, and regulators must address ... .
  • The algorithms that control autonomous vehicle will need to embed moral principles guiding their decisions in situations of unavoidable harm.
  • survey queries (名詞)
  • an ethics thought experiment
  • A person watching the events unfold must choose between an intervention that sacrifices one person for the good of the group of people.
  • a key flaw in the study
  • AI does not have the same cognitive capabilities that we as humans have. ("AI" はノーヒント。)
  • a variety of sensors, including cameras and radar
  • The main challenge (to a driverless car) is in gathering and processing the necessary data quickly to avoid dangerous circumstances in the first place. Rajkumar (オブザーバー教授の名) acknowledges that this will not always be possible but he is skeptical that in such cases it will come down to the vehicle essentially deciding who lives and who dies. (ここは問38にかかる難所、下線部の間に "but" がおかれる論理的つながりに戸惑うかもしれないが、ポイントは、この教授が "not always possible" と語る対象と、彼が"skeptical" である内容が別物であるということ。)
※ そういえば、"researcher" と "observer" の峻別を質す設問41も早稲田理工に似ている。
※※ さらに、論理性を質す設問42も似ている (この設問では、或る者の生存が別の者の犠牲に依るとの排他的要件、つまり道義上のジレンマ厳密に選ばせている。) こういう論理輻輳タイプのパズル出題はこんご慶應や早稲田の理系学部では増えていくようにも察せられ、「英語らしさ」の追求としてみればまこと好ましい。

【 2017-II 】
  • Microalgae (微細藻類) is less land-intensive than corn production. 
  • the largely pro-corn Renewable Fuel Association
  • Corn is often outclassed in efficiency by algae-based fuels.
  • Algae biofuel frontrunner Algenol ... converts plentiful saltwater into biofuel with yields nearly 17 times higher than those of corn, while producing 1.4 gallons of fresh water per every gallon of fuel produced. (このあたり、何と何から何を作り出しているのか分かるだろうか?もちろん分かるべきだ。化学や生物を勉強してきたんだろう?)
  • Growing an ethanol-gallon's worth of corn costs 1,145 gallons of water.
  • simplistic metrics
  • Algae biofuel production can filter water, recycle runoff, and improve (chemical) emissions.
  • chemical breakdown of agricultural fertilizers (that are) trapped in soil ("breakdown" も分からないのなら慶應受けるのやめろ。理科で絶対に学んだはず。)
  • at best, a mediocre improvement
  • aquatic flora
  • Macroalgae, or kelp (海草) is a marine biofuel source promising some benefits that outstrip even its single-celled cousin. (ここは設問59にかかるヒッカケ、"micro --- " ではなく "macro --- " である。それで "single-celled cousin" の意味も分かる。)
  • On the freshwater front, prolific floating plants are gaining credibility as a candidate for wastewater-to-biofuel refineries.
  • water-borne nutrients

【 2017-III 】

孤独な個体はなぜ早死しやすいのか ─ 本当にあらゆる生物種について言えるのか、仮説と研究。論旨は極めて明瞭、英語表現も易しい。
※ 本テキストと直接の関係は無いが、世界各地には "Only the good die young." に相当する格言がある。不思議といえば不思議ではある。




【 2016-I 】
ヒュ-マノイド型ロボットは、既に活用されているロボット(機械)を上回るだけの経済的効用をもたらさない、よって製品開発化は進行しないだろう ─ という易しい内容。ただしその理由を挙げた第8~9段落は散文的ゆえ、論旨捕捉に留意方。
  • We have envisioned building humanoid machines.
  • microchip
  • market forces (名詞)
  • The mechanics of the human body are spectacularly complex.
  • Speaker-independent, open-ended speech recognition with better than 99 percent reliability isn't part of our near future. (ここで "open-ended" と "speech recognition" から文意を導くこと必須、ITの基礎知識と語感が全てであり、文法解析などはむしろそれらを鈍らせるばかり。)
  • artificial intelligence (これも現代テクノロジー論の「ド」常識)
  • Reproducing human thought in a controlled situation - like the game of chess - is barely within our grasp.
  • something we'll be able to develop for generations, if ever
  • build a machine to replicate the human form
  • intersection (この語は早慶他学部でもちらっと見た、もちろん汎用語)
  • A humanoid robot would be a multipurpose platform that could do almost anything.
  • select robotic options on the fringe of self-driving technology
  • collision avoidance

【 2016-II 】
ナノテクノロジーにおける小稿、新しさがいい。 "nano" も "big data" も "the cloud" も英語以前の超基本知識だ。
  • A nanoparticle is one billionth of a metre.
  • Richard Feynman, a renowned physicist and Nobel Prize winner : the father of quantum electrodynamics  (理工学部に続けてまたファインマンだ。むろん、彼の名と基本業績くらいは基礎教養として知っていてもおかしくはない。)
  • the use of powerful supercomputers to make the most of decades of big data on tiny nanoscience
  • self-cleaning surfaces, fuels cells for harnessing energy, printable inks that conduct electricity ...  (どれも名詞。表面科学についての知識。)
  • Diamond nanoparticles ... have unique electrostatic properties that make them spontaneously arrange into very useful structures. ("property" は最重要の多義語。ここでは何のことか。)
  • underpin the development
  • life-saving chemotherapy treatment
  • brain tumour
  • Going into big data-sets to identify trends between nano properties and structures is like finding buried treasure. It's exciting when you can see the forest for the trees and  get a moment of clarity when all the data collects. (まとめて引用、ここが一番読み応えのある箇所。 "properties" と "structure" は前文での定義に拠って考える。)
  • By predicting how imperfections at a molecular level impact on performance, we can design products with less susceptibility to faults from the outset.
  • Implementing our science on the (big data) cloud is the biggest technical challenge.
  • The cloud would provide easy open access to results amongst our research peers.

【 2016-III 】
これはなかなかの良問!早稲田理工の出題と歩調合わせたかのように脳とコンピュータについて取り上げた、教養英語の最先端テキスト。尤もこちらは 『人間の情感含めた頭脳活動と行動は根源的にどれだけコンピュータに近似しているか』 と探究してゆくもので、逆ではない。
接続詞や副詞が少なめで部分否定表現が多い、慶應好みの文面(今回はニューヨークタイムズ誌)だが、理科の基本名詞さえあれば論旨捕捉はさほど難しくはない。参照図案が付けられていればもっとよかった。来年からそうして欲しい(笑)。
  • holographic storage device
  • analogy without a lot of substance
  • serial, stored-program machine
  • The brain's nerve cell are too slow and variable to be a good match for the transistors and logic gates that we use in modern science. (ここの "match" の意味、それからなぜ単数表現かを考えたい。)
  • a serial algorithm-crunching machine
  • measurable phenomena (like the mechanics of how calcium ions are trafficked through a single neuron)
  • Virtually every time a human does anything, many different parts the brain are engaged; that's parallel, not serial. (まとめて引用、とりあえずここで "parallel", "serial" の違いが分かれば基礎教養は有る。そうでなければここでギヴアップ。)
  • hard-drive controller
  • central processor
  • multicore processor
  • graphic processing unit
  • metaphor
  • Things that are digital operate only with discrete divisions, as with the digital watch ; things that are analog work on a smooth continuum.
  • Neural systems ... that modulate emotions appear to work in roughly the same way as the rest of the brain does, which is to say that they transmit signals and integrate information, and transform inputs into outputs. ... That's pretty much like what computers do. (ここで、脳のコンピュータへの機能的な近似性を説き始めていることに留意。コンピュータが脳にどのくらい似てるかではない。)
  • The real payoff in subscribing to the idea of a brain as a computer would come from using that idea to profitably guide research. ("payoff" はもうすっかり定番の表現。いまだにちゃんと説明していない予備校センセもいるので注意。)
  • FPGAs (Field programmable gate array) consist of a large number of "logic block" programs ...  One logic block might do arithmetic, another signal processing, and yet another look things up in a table. (ここが最大の難所。ゲートアレイが構成するという "logic block" はハードかソフトか、何を成しうるのか、絵が無くとも精密に考えたい。)
  • The brain might similarly consist of highly orchestrated sets of fundamental building blocks, such as "computational primitives" for constructing sequences, retrieving information from memory, and routing information between different locations in the brain. (ここが最大のヤマ場だ。上に続いてここでも "block" とあり、とくに "primitive" がじつに分かりにくいが、脳内での演算処理の "sequences" を形成する... となると演算用の最も根源的なプログラムをさす ─ はずだ。)
  • the Rosetta Stone that unlock the brain (洒落た比喩表現。ロゼッタストーンじゃなくて "unlock" の方が。)
  • It is unlikely that we will ever be able to directly connect the language of neurons and synapses to the diversity of human behavior. (ここがすんなり分かればもう全貌を掴めたも同じ。"language" に留意、プログラム言語という意味では断じてない。)
  • There is no reason to think that brains are exempt from the laws of computation.




【 2015-I 】
言語多様性を残せ!というメッセージで、ニューヨークに流入し続ける移民と「その結果としての」複数言語の無秩序な並立あるいは消失を語るもの。(なお、言語についての論旨は定量的な効用判断が希薄となりがちなもの、主旨を見失わぬよう留意。)
  • By the late 19th century, New York had become a melting pot of footloose Europeans.
  • If a language has a million speakers worldwide, most likely one of those speakers live in New York - but so are many endangered and vanishing languages. (全世界でみて、或る一言語あたりそれぞれ百万人の話者がいるとして…、というここでの論理設定からニューヨークの在りようが分かるはず。)
  • the last remaining representatives of a whole language family
  • the liberation of word order
  • The great migrations ... came to a sudden halt with the Immigration Act of 1924, with its hard cap on immigrants and its racist quotas ... 
  • paramount
  • The secret language of barbers changed from Italian to Russian. (ここは文学的に面白い表現。)
  • Immigration in New York is so fast and fluid ... that the specific effects are easily missed. (ここの "miss" の真意は?)
  • The city is endlessly incorporating new cultures.
  • There's still an unease : we may well be swallowing up the world's diversity and spitting out monoculture. (ここも文学的ではあるが "diversity" と "monoculture" の対置が分かるだろうか?)
  • make up a plausible microcosm of global linguistic diversity
  • The place, almost by design, seems ever less than the sum of its parts, an endpoint for cultures, "a Babel in reverse"... ("The place" はここではニューヨークの意。さて "by design" を含めこの箇所は数値上の面積縮小について述べているのではない。とりわけ面白いのが「逆バベル」の喩で、バベルの塔の伝説 ─ 太古の人間は皆が均一の言葉を話す均一の種族であった ─ の逆が進行しているとの表現だが、本旨を理解して欲しい。)
  • a small nonprofit in an old commercial building
  • a scattered group of linguists who make ends meet elsewhere
  • Of the estimated 176 languages indigenous to and still spoken in the United States, at least fifty are nearly extinct.
  • improve cognitive development
  • Indigenous people with resilient languages and cultures are better able to withstand social breakdown.
  • Consider the massive loss of knowledge and wisdom and art that comes with the loss of any language, which no amount of last-minute translation can stop. ("last-minute translation" の逼迫した表現心理が分かるだろうか?)
※ なお設問対象とはなっていないが、第4段落にある、言語の "unique personality" について、真意は考慮に値するものである、ちょっと考えてみたい。

    【 2015-II 】 
    これは2013年の大問 I 同様、SNSメディアについての英文テキストだが、指示代名詞が極端に少なく、名詞の単数形表現が抽象か具体かを判別しにくいなど、まるでエンジニア専門誌のようなノリの文体が読み難い ─ とはいえ第8段落から始まる筆者なりの問題解決案以降は、他学部の英文と同様に読み進められるのではないか。
    本テキストの大意としては ─ Facebook や Google などのSNSメディアが、不特定多数のアカウントユーザに対し情報を提供ないしは隠しうるという選択的機能を恣意的に活用し、特定ユーザを特定利益に誘導することは社会的に公正と言い難い、だからこれらSNSメディアには最低でもユーザ情報の受託者たる責任を遵守させるべきである、という。とりわけ本テキスト前半部の理解には英語力よりむしろ数理(集合)のセンスの方が求められるかもしれない。
    (ちなみに、本テキストに引用の "newsfeed" とはFacebookユーザが共有で閲覧可能なニュース情報であり、また "likes" はユーザが個人判断にてそれらのニュース情報に付記する 「いいね!」 という嗜好フラグのことである。また Google はネット上での検索エンジンを提供しているが、検索ページにスポンサー企業などの広告を併せて提示している。)
    • ambitious experiment in civic-engineering
    • nudge bystanders to the voting booths
    • Users who were notified of their friends' voting were 0.39 percent more likely to vote than those in the other group, and any resulting decisions to vote also appeared to spread to the behavior of close Facebook friends. ( ここの "resulting" が学術的で捕捉しにくいが、何の "result" として何が起こったのか理解必須である。)
    • the ripple effect
    • Now consider a hypothetical hotly contested future election.
    • political party affiliation
    • He arranges for a voting prompt to appear within the newsfeeds of active Facebook users ...(中略) He could choose not to change the feeds of users who don't agree with his views. (ここでの "he" とは仮定として、或る排他的な特定政治志向を有するFacebook経営者のこと。この仮想経営者は何をしようとしているのか理解要。)
    • flip the outcome of the election
    • Our expectations is that those companies will provide open access to others' content and that the variables in their processes just help yield the information we find most relevant. Digital gerrymandering occurs when a site instead distributes information in a manner that serve its own political agenda. (2文まとめて引用、ここからようやく本テキストの主題に入る。ここの単数名詞 "content" が分かりにくいが、テキスト全体から鑑みてニュースフィードか検索結果の意。"variables" は理解必須。さて2文目のゲリマンダーとは一般に小選挙区制度(多数派による独占)にて、有力者が自己優位を図り選挙区を独善的に設定する施策をさす。政治経済の履修用語のひとつ。また、"instead" に要留意、つまり1文目の "open access" とは異なり "distribute" しているの意である。)
    • leverage their awesome platforms to attempt to influence policy
    • Google blacked out its home page "doodle" as a protest against the pending Stop Online Piracy Act in the US, which they thought would cause censorship. (抗議的態度を見せたGoogleと "censorship" の相反する利害関係を理解して欲しい。)
    • A social-media or search company looking to ... attempt to create a favorable outcome in an election would certainly have the means.
    • fail-safe
    • In the United States, both people and corporations have a First Amendment right to free speech - and to present their contents as they see fit.
    • Meddling with how a company gives information to its users ... is asking for a trouble.
    • require web companies entrusted with personal data and preferences to act as "information fiduciaries" (情報の受託者)
    • provide a way for users ... to see how that content would appear if it were not personalized (ここでの "content"も検索結果やニュースフィードを指す。なお "personalized" の真意を理解必須。)
    • use any formulas of personalization
    • subliminal messages in TV advertisements
    • The worst case scenarios should be placed off limits.




     2014-I 
    地球温暖化などなどで引用される諸々のデータは、実際は人間自身の体感や連想力から暫定的に捻出されるに過ぎない場合もある ─ と説くテキスト、早稲田理工にちょっと似た段階的な分析展開で、こちらの方が語彙の抽象度は高いがメモを取りながら読めば易しい。
    • Hurricane Sandy devastated the US Atlantic coast.
    • sway people’s view (総合政策のテキストでもキーワードとして引用された動詞”sway”は、意外に勘違いしやすいもの、辞書で例文を確認しよう)
    • global warming and other pressing environmental and social concerns
    • They may think it reasonable to infer that the global climate is changing, forgetting that global warming actually entails a gradual elevation on the earth’s average temperature. (”entail”は論文では頻出の動詞、出来れば覚えておきたい。)
    • subliminal message (理科で習ったはず)
    • they flashed the word “thirst” on a computer screen for 17 milliseconds
    • activate the thought without having the physical experience
    • transparency of each photo
    • all the way to 100 percent (図抜けて面白い汎用表現)
    • Liberals were more likely than conservatives to believe in global warming.
    • Trying to convince people of something by simply delivering facts can sometimes be polarizing because it gives people something to react to. (ここが読み取れれば、唯一の難問である出題[30]にも対処出来よう。なお”polarize”はどちらかといえば社会科の英語だが論文では頻出。)
    • elicit a more universal intuitive response
    • The term global warming was coined. (この”coin”も論文では頻出動詞)
     2014-II 
    ア メリカで主に進展した第二次産業革命が生み出した工業の枠組みは、今現在の世界の諸産業においても製品技術においても根本的には変わっていない ─ とい う旨の学際的なテキストで、高名な経済学者クルーグマン氏なども引用されつつ、主題への賛否両論をちょっと戸惑わせる構成だ。もっとも、スケール大きな素 晴らしい主題の割には導入部だけで終わっているのが惜しい。
    • Nothing happened that mattered.
    • the well-being of average people
    • It took 350 years for a family to double its standard of living.
    • Two things happened that did matter, and they were so grand that they dwarfed everything that had come before and encompassed most everything that has come since. (”most everything”という語法はない、などと子供みたいなレベルで遊んでいる教師や講師は、きっと大人向けの先鋭かつ強引な英文メディアを知らないのだろうから無視しなさい)
    • incredible stroke of good luck
    • permanent stagnation
    • Human intelligence is more efficiently mobilised by spreading education and expanding global connectedness.
    • What is to say that anything similar will happen again ? (”what is to say that ... ?”は汎用的な常套句)
    • breakthrough
    • internal combustion engine (理科社会ともに超常識語!)
    • Electrical appliances allowed women of all social classed to leave behind housework for more productive jobs. (この”productive”あるいは”productivity”は経済・ビジネス分野における最重要単語のひとつ、かつ多義語である。文脈ごとに意味をおさえたい。)
    • public sewers and water sanitation
    • infant mortality
    • a science fiction streak
    • economics of technology
    • The long history of Marx-inflected literature and film that claims that office work is dehumanising may have been onto something. (理系だろうがなんだろうが”Marx”を知らなかったら話にならない。”dehumanise”はスペルから類推力で意味を考えたい。なお”onto”は総合政策でもキーワードの一つとなったが、辞書で例文を確認しておこう。)
    • a whole set of behaviours ... our laissez-faire-ism, our can-do-ism, our cult of the individual (レッセ=フェールなどは社会科で習ったはずだ)
    • We think of the darkening social turn that happened in the early 1970s as having something to do only with the social energies of the sixties collapsing in on themselves.  (この箇所は、70年代初頭の経済停滞を限定的な例にすぎぬとした例。なお”collapsing”の主語は”something”である。)
    • Increased global connectedness hampers competition.
    • Neither computers nor the Internet would have ever come to pass. (なぜインターネットが大文字Iで始まるのか、常識としてちゃんと理解しておくこと。)
    ※ 設問[53]は排他的選択で正答させるものだが、積極的な正答選択肢は無いのでは?
    設問[54]は飛行機やマスメディアが第二次産業革命の”natural result”であると判定させるもの、しかし工業製品をnaturalなものと判断しうるのか?



    2013-I
    IT技術によって収集・形成されるユーザ個人の諸々の特性データの総計は、その対象個人の人格(生き様)と一致しうるか(或いはし得ないか) ─ と問いかけるやや学術性の高いエッセイで、かつGoogleFacebookによるユーザ個々人の嗜好性の認識手法などは一般人の見識を超えた引用ではある。つまり久しぶりに学生には手ごわい内容となった。
    とはいえ、本問は情報工学の基礎素養を問い質す出題でもあり、一定以上の素養を有する受験生であれば第6パラグラフまで読了した時点で本旨を総括し得たのではなかろうか。
    ※ なお予め記しおくが ─ 本テキストを理解する上で観念的に最も重要な語の一つは ”context” であり、本テキストでは「条件・状況」の意であること理解必須、また ”self” も要留意で各文から観念をとらえること必須である。
    また本テキストは順接・逆接の副詞が極端に少ないのでやや読み難いが耐えること、さらに仮想表現も無視せぬよう…但し、設問で求められる動詞熟語の一部は難度高く学生の領域を超えたもの。
    • development of “personalization – the process through which the type of information offered is adjusted to user’s demands  (テキスト冒頭箇所におけるこの定義から、”personalisation” は「ユーザ自身によるIT最適化の所為ではない」ことに要留意。) 
    • spend more time consuming broadcast media than personalised content streams on the Internet 
    • Personalization require a theory of what makes a person – of what bits of data are most important to ascertain who someone is. ”someone” はここでは誰か或る人物のこと。) 
    • The assumption is that searches for “intestinal gas”() and celebrity gossip are between you and your browser ... it’s that behaviour that determines what content you see in Google News, what ads Google displays – that determines, in other words, Google’s theory of you. (この一連の箇所がGoogle検索エンジンとユーザの関係の概説、なお ”The assumption” はユーザ自身の仮定を指す。) 
    • benefits and drawbacks 
    • A self (that is) built on clicks will tend to draw us even more toward the items we’re predisposed (癖になっている) to look at already. 
    • your perusal of an article on a celebrity gossip 
    • Your Facebook self is more of a performance, less of a metaphoric black box. (慶應受けるならブラックボックスくらいは常識!) 
    • We are more than the bits of data we give off as we go about our lives. (第6段落のこの箇所で本テキストの論旨が見えてくる。) 
    • paradigm (これも常識語!) 
    • explain people’s behaviour in terms of their unchanging inner traits 
    • fluid 
    • The plasticity of the self allows for social situations that would be impossible or intolerable if we always behaved exactly the same way. 
    • aspiration 
    • By the same token, billboards in the night-life district promote different products than billboards in the residential neighbourhoods .... 
    • companies who have skewed view of what identity is 
    • Everything we do enters a permanent, pervasive online record. 
    • chilling effect 
    • genetic privacy 
    • We‘re so far away from the nuances of what it means to be human, as (we are) reflected in the nuances of the technology. 
    • In theory, however, the one-identity, context-blind problem isn’t impossible to fix. (第12段落のこの箇所が本テキストの最終総括である。) 
    • balance long-term and short-term interests 
    • gauge the workings of your psyche 
    • jeopardize


    2013-II 
    こちらは早稲田商学部あたりで出題しても良い包括的な工業技術論で、ソフトウェアで実現しうる機器製造工程の融通性と、最終製品としての機能保全性をともに考えさせるもの。
    • “Smart” infusion pumps deliver drugs perfectly dosed for individual patients.
    • the brink of death 
    • The software in a pacemaker may require over 80,000 lines of code. 
    • vulnerability to digital attacks 
    • Software in a medical device malfunctions. 
    • reboot PC 
    • the expertise or the willingness to utilize new tools 
    • patent infringement 
    • source code 
    • validate software 
    • build the device from the scratch 
    • hardware specification 
    • assembly instruction 
    • Open-source model is more sustainable. (この “open-source” は何をオープンにしているのか、常識ではあるが言葉と観念だけでいくら考えても判るものではない。) 
    • FDA (Food and Drug Administration) insists on a rigorous paper trail detailing software development. 
    • good fit with the collaborative and often informal nature of open-source coding 
    • navigate the regulatory regime 
    • embrace openness 
    • A blood-pressure cuff (血圧計) could instruct a drug pump to stop delivering medication if it sensed that a patient was suffering an adverse reaction. 
    • open-source hub

      
    2012- I 
    遺伝工学が市場経済にもたらす利益競争のリスクに対して、社会の結束力は抑止力たりうるだろうかと問いかける ─ 前年よりは易化したもののダイナミックな論旨のテキスト、とはいえ発展的見解の無きまま消化不良の読後感は残るものの。
    • genetic engineering 
    • biotechnological enhancement
    • artificially improve children in a quest for perfection 
    • undermine the unconditional love parents have for their children 
    • resort to genetic engineering for the sake of giving their children a competitive edge 
    • hormonal deficiency 
    • I consider breakthroughs in genetics a great blessing for medicine and for the relief of suffering. 
    • Eugenics was associated with coercion and state control of reproduction. 
    • The connection between solidarity and giftedness saves a merit-based society from sliding into self-centredness.  
    • humility and restraint 
    • civic consequences
    2012-II
    医学部の英文にも出てくる “tag経済学部でも登場する “identity theft” など、やはり同じ慶應のこと、語彙の選択基準も通じているのか(もっともこのような共通キーワードの例は過去にもいくらでもあるのだが。)
    • Many of the world’s collective knowledge is now freely accessible at a moment’s notice with simple keyword searches.
    • crooked business dealings
    • evolution of the concept of “surveillance” in the Internet age
    • negative connotation
    • identity theft
    • online financial scams
    • cyber crimes and misdemeanours ("demean" は知っておいて欲しい) 
    • your movements are being logged 
    • susceptible to possible attack from strangers 
    • location tagged photographs 
    • comment moderation 
    • opting out of certain services 
    • venue 
    • The watcher occupies a position metaphorically above the watched. (metaphoric は頻度高い語彙ではないが、“meta”から類推されたし) 
    • flat power structure wherein the watcher and watched are of equal standing 
    • whereabouts


    2011 – 
    これは文意の難度高め、主題と反証が輻輳するメッセージ。
    人間の心性や特性に対する理解を観察対象者の内因性のみに完結させることなく、観察時に対象者がおかれた事情(context)をよく斟酌した上で客観化させるべきである、と説いている。
    そこを見極めれば正答は意外にたやすい。
    • All of us, when it comes to personality, naturally think in terms of absolutes : that a person “is” a certain way or not “is not” a certain way. 
    • stable
    • think of character as unified and all-encompassing 
    • inherent traits
    • attribution (to each human behaviour) 
    • dispositional explanation for events
    • They are told to play a quiz game, then they are paired off and they draw lots. 
    • the most impossibly biased and rigged set of questions 
    • personal cues, contextual cues
    • Older siblings are domineering and conservative.
    • Younger siblings are more creative and rebellious.
    • Psychologists actually tried to verify the claim and showed that we do reflect the influences of birth order. 
    • If we constantly had to qualify “every assessment” of those (people) around us, how would we make sense of the world ?
    • The human kind has a mind of "reducing valve" that creates and maintain the perception of continuity in the face of perpetual observed changes in actual behaviour. (ここの "valve" の真意をつかみたい。)
    2011- II 
    これは慶應英語最高の名文のひとつか、生物の機能進化と人間社会の組織化を巧妙に比較論証しているエッセイで、そのメッセージは環境情報学部にしてはかなり「多元的で複雑」、むしろ経済学部の英文に近い。 
    • We can transfer words, code, equations, music or video anytime to anyone, essentially for free. 
    • We evolved complex brains controlling our behaviour, partially displaying basically hormonal, one-to-many systems. 
    • unicellular 
    • bacteria 
    • single-celled organism 
    • Amoeba is a self sufficient entity. 
    • Being “jacks of all trades”, such cells were masters of none. (この程度の慣用句は知っておきたい) 
    • Specialisation and division of labour allowed teams of cells to vastly outclass their single celled ancestors. 
    • This question directly parallels the origin of societies of specialised humans. 
    • In hormonal systems, master control cells broadcast potent signals all other cells must obey. 
    • Powerful dictatorship issues sweeping orders. 
    • A novel cell type is specialised in information processing: the neuron. 
    • Language enables humans to move arbitrary thoughts from one mind to another. 
    • Small bands of people forms local clusters of organisation.
    • hunter-gatherers
    • proclamations and legal decisions of the ruler 
    • We are on the brink of a wholly new system of social organisation.
    • universal protocols for information transfer such as HTML and TCP/IP
    • well-connected collective entities like Google and Wikipedia
    • Political, economic and military power remains insulated from the global brain.
    • During natural selections, billions of competing false starts and miswired individuals were ruthlessly weeded out.  (miswired は、誤って生命情報が回路付けされた、くらいの意か、一般誌でもしばしば見受けられる表現)
    • trial and error process
    • extract a functional configuration



    2010 –I 
    • dark and savage age of world wars, genocide, and totalitarian ideologies
    • non-renewable resources
    • erasure of entire ecosystems
    • We may be ready to settle down before we wreck the planet.
    • per-capita fresh water 
    • The ecological footprint – the average amount of productive land and shallow sea appropriated by each person for food – is about one hectare in developing nations. 
    • Homo sapiens has become a geophysical force to attain that dubious distinction. 
    • Immediate future is conceived of as a bottleneck in the Century of Environment. 
    • obstinacy 
    • doomsaying 
    • Cereal production, the source of more than half the food calories of the poor nations, rose from 275 kilograms per head in the early 1950s to 370 kilograms by the 1980s. 
    • Population must outstrip the limited resources. 
    • On occasion this scenario unfolded locally. 
    • Earth is finite. 
    • corporate annual reports 
    • competent projection of the world’s long-term economic future 
    • two polar views of the economic future 
    • Earth, unlike the other solar planets, is not in physical equilibrium. 
    • For hundreds of millennia those who worked for short-term gain lived longer and left more offspring. 
    • The long view that might have saved their distant descendants required a vision and an extended altruism instinctively difficult to marshal.
    2010 – II 
    • seek a greater degree of civility among members of the House of Representative (civility は使用頻度の高い語彙ではないが、テキスト前段部から判断して「敬意に満ちた礼儀正しさ」くらいの語義であること読みとるべき) 
    • foster an environment in which vigorous debate and mutual respect can co-exist 
    • Republicans and Democrats 
    • the demand for society to conform to the rules of civility 
    • gross hypocrisy 
    • Who has not felt like yelling at injustice or tearing down the walls of prejudice ? 
    • Dr. King’s genius was to inspire the diverse people involved in the struggle to be civil and loving in their dissent. 
    • partisan 
    • system of segregation 
    • the connections that bind America’s heterogeneous population into a united community 
    • code of conduct 
    • value the means of our achievements as well as the ends of our desires


    2009 – I 
    • The rivers are the people’s lifeblood. 
    • Lacking proper sanitation and water-storage facilities, Bangladesh is also prone to epidemics of water-borne diseases. 
    • Render large tracts of agricultural land useless. 
    • well water contaminated with arsenic 
    • The issue was overlaid by fractious regional politics. 
    • For politicians, water is the defining issued, and the Ganges’s basin is home to some 400 million people. 
    • The picture looks bleak. 
    • low-yielding but flood-tolerant rice 
    • Aid-donor-backed irrigation schemes, later incorporating groundwater pumping, have opened up vast areas of fertile delta soil to the plough. 
    • The pollution has quadrupled since 1950. 
    • The rapid population growth has exacerbated problems with water-borne disease. 
    • The programme was deemed an unqualified success. 
    • The tragedy that has subsequently unfolded reveals in stark terms how “solutions” to water-resource problem can go astray. 
    • The villagers’ water supply was massively tainted with the metal. 
    • organic material 
    • The finding has sown seeds of doubt.
    2009 –II 
    • Ideally, the parent would allow the child to gain coordination and competency though manipulating his utensils and feeding himself. 
    • The teacher may later discourage the autonomy strivings of the young child. 
    • The danger lies in a sense of inadequacy and inferiority which the child may gain. 
    • Failure becomes a self-fulfilling prophecy. 
    • Misguided efforts of adults seriously interfere with growth in competence and cause lasting damage. 
    • inspire the individual to exert that little extra something 
    • crippling feeling of inadequacy and despair 
    • He may mutter that “it isn’t fair”. 
    • Persistent failure may lead to anxiety and failure-avoidance patterns of effort. 
    • No one will expect him to succeed and hence will not condemn him for failing. 
    • A teacher who grades the class on a sliding scale, with A’s(A評点のこと) going to the children who compete the most problems correctly or write the most imaginative or sophisticated papers ... , is setting up a competitive situation that will defeat some children all the time. (この箇所、原文は更に長いものだが、何を書いてあるのか3回読むうちには理解して欲しい) 
    • mediocre 
    • balance the realisation of academic nonachievement and recognition of intellectual incompetency 
    • treadmill 
    • The criterion of ultimate success for the teacher is a child who is competent to direct his own learning with minimal guidance and help from the teacher. 

    以上

    謝辞

    ここに提示の記事は、いずれも私自身の判断責任のもと編集・投稿したものです。

    大半の投稿は学生など若年層向けを意図してやや平易な表現にて、通俗性は極力回避しつつ、論旨の明示性を重視しつつ書き綴りました。あわせてまた、社会人の皆様にお読み頂くことも想定しつつ、汎用性高い観念知識を相応に動員しながら記した積もりです。

    私なりの思考着想によるささやかな閃きが、皆様の諸活動にて何らかの光源たり得れば、望外の喜びであります。

    山本